肝静脈の段階的な血栓化により肝不全死したBudd-Chiari症候群の1例

症例は35歳女性.平成22年より非B非C型肝硬変として近医に通院しており,平成23年8月CTにて下大静脈と右・中肝静脈の閉塞所見を指摘された.平成24年1月より発熱,嘔気,腹部膨満が出現し,前述のCT所見に加え左肝静脈内に新鮮な血栓による閉塞所見を認めた.ここで初めてBudd-Chiari症候群と診断され,加療目的に当院紹介入院となった.ダナパロイドナトリウム2500 U/dayによる治療が行われたが,血栓は改善せず,浮腫・腹水著明となった.肝不全,呼吸不全の進行により,同年2月永眠された.剖検では右及び中肝静脈領域は陳旧性血栓に伴う肝硬変の所見であったが,左肝静脈領域はうっ血性に腫大しており...

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Published in肝臓 Vol. 55; no. 10; pp. 612 - 618
Main Authors 長沼, 篤, 山田, 正信, 宮前, 直美, 壁谷, 建志, 小川, 晃, 小柏, 剛, 上原, 早苗, 石原, 弘, 工藤, 智洋, 佐藤, 賢, 高木, 均, 柿崎, 暁, 湯浅, 絵理奈, 林, 絵理, 星野, 崇
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本肝臓学会 2014
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ISSN0451-4203
1881-3593
DOI10.2957/kanzo.55.612

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Summary:症例は35歳女性.平成22年より非B非C型肝硬変として近医に通院しており,平成23年8月CTにて下大静脈と右・中肝静脈の閉塞所見を指摘された.平成24年1月より発熱,嘔気,腹部膨満が出現し,前述のCT所見に加え左肝静脈内に新鮮な血栓による閉塞所見を認めた.ここで初めてBudd-Chiari症候群と診断され,加療目的に当院紹介入院となった.ダナパロイドナトリウム2500 U/dayによる治療が行われたが,血栓は改善せず,浮腫・腹水著明となった.肝不全,呼吸不全の進行により,同年2月永眠された.剖検では右及び中肝静脈領域は陳旧性血栓に伴う肝硬変の所見であったが,左肝静脈領域はうっ血性に腫大しており,新鮮な肝静脈血栓を認めた.この所見により,右中肝静脈閉塞が先行し,その後左肝静脈にも血栓が生じたことで,段階的かつ急速に肝不全が進行したことが確認された.Budd-Chiari症候群は希少疾患であるが,今回我々は剖検によって病態の進行過程を確認できた興味深い貴重な症例を経験した.また救命のためには迅速な肝移植が必要であったと思われた.
ISSN:0451-4203
1881-3593
DOI:10.2957/kanzo.55.612