鼠径ヘルニアに対するKugel法術後に発症した絞扼性イレウスの1例

症例は73歳,男性.2005年4月に右外鼠径ヘルニアに対しKugel法によるヘルニア根治術が行われている.2007年3月下旬にイレウスの診断で当科外来を紹介受診.右下腹部の手術創部に一致して圧痛を認め,腹部CT検査でも同部に消化管の癒着を疑わせる所見を認めた.癒着性イレウスの診断で緊急入院し,long tubeを挿入して経過観察を行ったが症状が全く改善しなかったため,第3病日に緊急手術を施行した.前回手術創部直下の腹膜に大網が強固に癒着しており,そのために形成された孔に回腸が入り込み絞扼されていた.大網を腹膜から剥離すると腹膜外腔にprosthesis(=Kugel patch)が腹腔側に突出...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 69; no. 4; pp. 833 - 837
Main Authors 野村, 修一, 太田, 徹哉, 大谷, 裕, 国末, 浩範, 臼井, 由行
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2008
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.69.833

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Summary:症例は73歳,男性.2005年4月に右外鼠径ヘルニアに対しKugel法によるヘルニア根治術が行われている.2007年3月下旬にイレウスの診断で当科外来を紹介受診.右下腹部の手術創部に一致して圧痛を認め,腹部CT検査でも同部に消化管の癒着を疑わせる所見を認めた.癒着性イレウスの診断で緊急入院し,long tubeを挿入して経過観察を行ったが症状が全く改善しなかったため,第3病日に緊急手術を施行した.前回手術創部直下の腹膜に大網が強固に癒着しており,そのために形成された孔に回腸が入り込み絞扼されていた.大網を腹膜から剥離すると腹膜外腔にprosthesis(=Kugel patch)が腹腔側に突出するように存在していた.腹膜を開き,精巣動静脈や精管を巻き込んだこのpatchを除去し,3DMax meshにてHesselbach三角をcoverしてから腹膜を閉鎖し手術を終了した.今日では,様々なタイプのproshesisがヘルニア根治術に使用されており,それに伴う特有の合併症の報告がみられる.しかしKugel法術後にprosthesisが原因で発症したイレウスの本邦報告例は過去に1例しかない.術者は,今回われわれが経験したような術後合併症があることも念頭に置くべきである.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.69.833