健側アプローチによる成人の先天性食道気管支瘻の一手術例

症例は74歳,女性.約40年前から右下葉の肺炎を繰り返し,食道気管支瘻と診断されていた.血痰,喀血,嚥下時の咳嗽発作が続くため,手術目的で当院に紹介となった.食道造影やCTでは食道下部から右下葉に交通する瘻管を認め,右下葉は荒蕪肺となっていた.手術は右開胸で瘻管の閉鎖と右下葉の切除が妥当と思われたが,患者は宗教上の理由により輸血を拒否したため,強固な癒着が予想される右からのアプローチはリスクが高いと考え,左からの小開胸で瘻管の遮断のみ行った.瘻管の周囲には強い癒着はなく,剥離は容易であった.出血量は50 mlで術後経過良好,術後約2週間で退院となった.その後肺炎を繰り返すこともなく,血痰は止ま...

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Published in日本呼吸器外科学会雑誌 Vol. 29; no. 1; pp. 46 - 50
Main Authors 星野, 大葵, 吉澤, 正敏, 石田, 久雄, 桑原, 正喜
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会 2015
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ISSN0919-0945
1881-4158
DOI10.2995/jacsurg.29.46

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Summary:症例は74歳,女性.約40年前から右下葉の肺炎を繰り返し,食道気管支瘻と診断されていた.血痰,喀血,嚥下時の咳嗽発作が続くため,手術目的で当院に紹介となった.食道造影やCTでは食道下部から右下葉に交通する瘻管を認め,右下葉は荒蕪肺となっていた.手術は右開胸で瘻管の閉鎖と右下葉の切除が妥当と思われたが,患者は宗教上の理由により輸血を拒否したため,強固な癒着が予想される右からのアプローチはリスクが高いと考え,左からの小開胸で瘻管の遮断のみ行った.瘻管の周囲には強い癒着はなく,剥離は容易であった.出血量は50 mlで術後経過良好,術後約2週間で退院となった.その後肺炎を繰り返すこともなく,血痰は止まり,結果的に肺切除は必要なく瘻管の遮断だけで十分であったと判明した.文献例では類似の症例で肺切除を行っている症例が多く見られるが,本症例の経験は示唆に富むと考え,報告する.
ISSN:0919-0945
1881-4158
DOI:10.2995/jacsurg.29.46