大網に発生した悪性中皮腫の1例

症例は67歳,女性.既往歴は37歳時に卵巣嚢腫で開腹手術を受けた.下腹部痛を主訴に当院を受診した.腹部造影CTで大網の著明な肥厚を認め,特発性大網脂肪織炎と診断された.抗菌薬・ステロイドで改善せず,当科で診断的手術を行った.大網は腫瘍性に肥厚しており,術中迅速病理検査では悪性の診断であった.小腸間膜に多数の播種病変を認め,大網腫瘍の可及的な減量手術のみを行った.永久病理検査において,大網由来の上皮型悪性中皮腫と診断された.術後経過は良好であり第13病日に退院したが,急激に病状が悪化し手術から73日目に死亡した.中皮腫は漿膜腔を覆う中皮細胞由来の比較的稀な悪性腫瘍であり,胸膜,腹膜,心膜に発生す...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 78; no. 12; pp. 2748 - 2754
Main Authors 山内, 周, 山田, 晃正, 太田, 勝也, 上田, 正射, 津田, 雄二郎, 池永, 雅一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2017
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.78.2748

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Summary:症例は67歳,女性.既往歴は37歳時に卵巣嚢腫で開腹手術を受けた.下腹部痛を主訴に当院を受診した.腹部造影CTで大網の著明な肥厚を認め,特発性大網脂肪織炎と診断された.抗菌薬・ステロイドで改善せず,当科で診断的手術を行った.大網は腫瘍性に肥厚しており,術中迅速病理検査では悪性の診断であった.小腸間膜に多数の播種病変を認め,大網腫瘍の可及的な減量手術のみを行った.永久病理検査において,大網由来の上皮型悪性中皮腫と診断された.術後経過は良好であり第13病日に退院したが,急激に病状が悪化し手術から73日目に死亡した.中皮腫は漿膜腔を覆う中皮細胞由来の比較的稀な悪性腫瘍であり,胸膜,腹膜,心膜に発生する.腹膜原発は全中皮腫の10~30%とされ,その原発部位が同定されないことが多く,診断に難渋する.今回,われわれは大網原発の悪性中皮腫の1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.78.2748