頭蓋内病変を合併し,手術時期に苦慮した感染性心内膜炎の2症例

感染性心内膜炎(infective endocarditis: IE)は心内膜に感染巣を有する重症感染症のひとつであり,多彩な全身性合併症を呈する。今回脳出血で発症し,心エコーを繰り返すことで疣贅を認め,敗血症の原因であったため僧帽弁置換術となった1症例と,脳梗塞にて発見されたIEで,開頭術と開心術の順序選択と手術時期について熟慮を要した1症例を経験し,良好な転帰を得たので文献的考察を加えて報告する。症例1は57歳の女性。感冒様症状があり,その後中毒性表皮壊死症を来し,ステロイド大量療法および創処置を行った。その後40度台の発熱,意識障害を認め,頭部CTを施行したところ左頭頂葉に皮質下血腫を認...

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Published in日本救急医学会雑誌 Vol. 24; no. 11; pp. 947 - 953
Main Authors 恩田, 秀賢, 渡邊, 顕弘, 橋詰, 哲広, 松本, 学, 金, 史英, 布施, 明, 横田, 裕行
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本救急医学会 2013
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ISSN0915-924X
1883-3772
DOI10.3893/jjaam.24.947

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Summary:感染性心内膜炎(infective endocarditis: IE)は心内膜に感染巣を有する重症感染症のひとつであり,多彩な全身性合併症を呈する。今回脳出血で発症し,心エコーを繰り返すことで疣贅を認め,敗血症の原因であったため僧帽弁置換術となった1症例と,脳梗塞にて発見されたIEで,開頭術と開心術の順序選択と手術時期について熟慮を要した1症例を経験し,良好な転帰を得たので文献的考察を加えて報告する。症例1は57歳の女性。感冒様症状があり,その後中毒性表皮壊死症を来し,ステロイド大量療法および創処置を行った。その後40度台の発熱,意識障害を認め,頭部CTを施行したところ左頭頂葉に皮質下血腫を認め,開頭血腫除去術を施行した。第8病日に腹壁出血,脾梗塞,腎梗塞および下大静脈血栓症を認めたため下腹壁動脈分枝を塞栓し,下大静脈フィルタを留置した。第24病日に施行した頭部CTにて新たな脳出血を認め,左中大脳動脈末梢部分に脳動脈瘤を認めたが,1週間後に自然消失した。経食道エコーにて僧帽弁に疣贅を認め,感染性心内膜炎の診断が確定した。僧帽弁形成術を施行し,第80病日リハビリ目的に転医した。症例2は50歳の女性。発熱と倦怠感があり,近医に入院加療。意識障害および左片麻痺を認め,MRIにて右中大脳動脈閉塞に伴う広範な梗塞巣を認めた。心エコーにて大動脈弁右冠尖に疣贅を認め,重度心不全を呈したため,手術および全身管理目的に紹介入院となった。大動脈弁置換術を施行したが,翌日の頭部CTで梗塞巣の腫脹と正中偏位を認め,瞳孔不同も出現したため外減圧術を施行した。状態が安定しリハビリ目的に転医した。IEに脳神経系合併症を併発した2症例を経験した。合併症に対する治療を行いつつ,適切な手術時期を判断して,集学的加療を適確に行うことが良好な予後につながると考える。
ISSN:0915-924X
1883-3772
DOI:10.3893/jjaam.24.947