心房中隔欠損症術後の循環不全に対する治療経験

症例は62歳,男性.20年前に心房中隔欠損症(atrial septal defect : ASD)と診断されたが未治療であった.健診で心雑音を指摘され,当院を受診し二次孔欠損型ASDおよび三尖弁閉鎖不全症と診断された.心カテでのQp/Qsは2.9,肺血管抵抗は3.1単位,収縮期肺動脈圧は90 mmHgであった.手術適応と判断され,ASD閉鎖術と三尖弁輪縫縮術を施行した.第2病日に肺動脈圧上昇と血圧低下をきたし,左心不全に陥った.カテコラミンとホスホジエステラーゼ(PDE)III阻害薬では左心不全が改善せず,大動脈バルーンパンピング(IABP)を挿入し循環動態は安定した.第10病日にIABPを...

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Published in日本心臓血管外科学会雑誌 Vol. 39; no. 2; pp. 74 - 77
Main Authors 齊藤, 政仁, 大喜多, 陽平, 六角, 丘, 今関, 隆雄, 入江, 嘉仁, 田中, 恒有
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会 2010
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ISSN0285-1474
1883-4108
DOI10.4326/jjcvs.39.74

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Summary:症例は62歳,男性.20年前に心房中隔欠損症(atrial septal defect : ASD)と診断されたが未治療であった.健診で心雑音を指摘され,当院を受診し二次孔欠損型ASDおよび三尖弁閉鎖不全症と診断された.心カテでのQp/Qsは2.9,肺血管抵抗は3.1単位,収縮期肺動脈圧は90 mmHgであった.手術適応と判断され,ASD閉鎖術と三尖弁輪縫縮術を施行した.第2病日に肺動脈圧上昇と血圧低下をきたし,左心不全に陥った.カテコラミンとホスホジエステラーゼ(PDE)III阻害薬では左心不全が改善せず,大動脈バルーンパンピング(IABP)を挿入し循環動態は安定した.第10病日にIABPを抜去した.術後に循環不全を発症した経過を考えると,ASDの手術時期は限界時期であったことが推察された.ASDに対する手術は比較的安全であると認識されているが,肺高血圧症を合併した高齢者例では術後循環不全の発生を想定した厳重な術後管理が必須と思われる.
ISSN:0285-1474
1883-4108
DOI:10.4326/jjcvs.39.74