複数の肝癌発症リスクファクターをもつ症例に見られた肝炎症性偽腫瘍の1例

症例は67歳男性.下肢のしびれ・疼痛を主訴に当院を受診し,血液検査にてC型肝炎ウイルス感染を伴うアルコール性肝炎,糖尿病と診断され,精査・加療目的にて入院となった.入院時に施行した腹部エコー検査にて,肝S8の限局性低脂肪化域に,径2 cm大のやや高エコーを呈する肝占拠性病変(SOL)を認めたため,引き続きダイナミックCTを施行した.SOLは早期濃染に乏しく,腹部造影MRIではT1で低信号,T2で高信号,DWIで高信号であり,辺縁にリング状の濃染を呈していた.低分化型肝細胞癌,転移性肝腫瘍,肝炎症性偽腫瘍,などが疑われたが画像診断のみでは診断に至らず,経皮的肝生検を施行した.結果は肝細胞の脱落と...

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Published in肝臓 Vol. 58; no. 11; pp. 611 - 618
Main Authors 柴田, 憲, 木村, 泰彦, 鏡原, 康介, 北田, 憲一, 大元, 謙治, 大野, 勝志, 山本, 真也, 日向, 眞
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本肝臓学会 2017
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ISSN0451-4203
1881-3593
DOI10.2957/kanzo.58.611

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Summary:症例は67歳男性.下肢のしびれ・疼痛を主訴に当院を受診し,血液検査にてC型肝炎ウイルス感染を伴うアルコール性肝炎,糖尿病と診断され,精査・加療目的にて入院となった.入院時に施行した腹部エコー検査にて,肝S8の限局性低脂肪化域に,径2 cm大のやや高エコーを呈する肝占拠性病変(SOL)を認めたため,引き続きダイナミックCTを施行した.SOLは早期濃染に乏しく,腹部造影MRIではT1で低信号,T2で高信号,DWIで高信号であり,辺縁にリング状の濃染を呈していた.低分化型肝細胞癌,転移性肝腫瘍,肝炎症性偽腫瘍,などが疑われたが画像診断のみでは診断に至らず,経皮的肝生検を施行した.結果は肝細胞の脱落と著明な小型浸潤リンパ球を伴った線維化を認め,炎症性偽腫瘍(inflammatory pseudotumor(IPT))と診断された.経過観察1年の段階でSOLは縮小・不鮮明化している.肝IPTは比較的まれな疾患であるが,肝癌発症リスクファクターを複数持つ慢性肝疾患患者においても,肝SOLの鑑別では念頭に置くことが重要と思われた.
ISSN:0451-4203
1881-3593
DOI:10.2957/kanzo.58.611