失語症の長期経過 —改善不良群を中心に
失語症状の長期経過を検討する研究の一環として,重度失語症にとどまった症例の特徴について検討した。対象は,右利き左大脳半球損傷の失語例 116 例。そのうち SLTA 総合評価法の最高到達点が 0~3 点にとどまった 38 症例の,原因疾患,病巣,SLTA 総合評価法得点経過について検討した。その結果,重度群における総合評価法得点の内訳は,単語から短文水準の理解項目である C1・C2・C3,および漢字・仮名単語,仮名 1 文字の音読項目である B1 による組み合わせがほとんどであり,発話・書字項目には改善を示さない症例であった。失語症に対する言語訓練を長期間実施しても,必ずしも回復するわけではな...
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Published in | 高次脳機能研究 (旧 失語症研究) Vol. 26; no. 4; pp. 348 - 353 |
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Main Authors | , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本高次脳機能学会
2006
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Subjects | |
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ISSN | 1348-4818 1880-6554 |
DOI | 10.2496/hbfr.26.348 |
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Summary: | 失語症状の長期経過を検討する研究の一環として,重度失語症にとどまった症例の特徴について検討した。対象は,右利き左大脳半球損傷の失語例 116 例。そのうち SLTA 総合評価法の最高到達点が 0~3 点にとどまった 38 症例の,原因疾患,病巣,SLTA 総合評価法得点経過について検討した。その結果,重度群における総合評価法得点の内訳は,単語から短文水準の理解項目である C1・C2・C3,および漢字・仮名単語,仮名 1 文字の音読項目である B1 による組み合わせがほとんどであり,発話・書字項目には改善を示さない症例であった。失語症に対する言語訓練を長期間実施しても,必ずしも回復するわけではない。しかし予後の推定要因はいまだ明確ではないため,どんなに発症初期の失語症が重度であったとしても,また病巣が広範であっても,安易に機能的な訓練をあきらめず,少なくとも 2 年以上の長期にわたって回復を試みる努力が重要かつ必要であるものと考える。 |
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ISSN: | 1348-4818 1880-6554 |
DOI: | 10.2496/hbfr.26.348 |