胸腔鏡下膿胸腔掻爬とゼラチンスポンジ瘻孔充填で治癒した有瘻性膿胸の1例

症例は78歳,女性.左膿胸と診断され,胸腔ドレナージと抗菌薬投与を約1カ月行ったが,膿胸腔と炎症所見とが残存したため当院へ転院.無瘻性膿胸と診断し手術予定としたが,手術待機中に線維素溶解療法を行ったところ,多量の喀痰が出現,この吸引により呼吸不全となった.治療により改善したが,線維素溶解療法による有瘻性膿胸の瘻孔の開通と考えた.手術は胸腔鏡下で行い,膿胸内容物を除去したところ肺に径約1cmの瘻孔が認められた.同部に抗菌薬を浸したゼラチンスポンジを充填した.術後空気漏れを認めず,術後11日で胸腔ドレーンを抜去,以後も良好に経過した.近年は,有瘻性膿胸に対する治療として,瘻孔の責任気管支に気管支鏡...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 76; no. 10; pp. 2412 - 2416
Main Authors 坂本, 和裕, 安藤, 耕平, 野間, 大督, 天野, 新也, 益田, 宗孝
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2015
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.76.2412

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Summary:症例は78歳,女性.左膿胸と診断され,胸腔ドレナージと抗菌薬投与を約1カ月行ったが,膿胸腔と炎症所見とが残存したため当院へ転院.無瘻性膿胸と診断し手術予定としたが,手術待機中に線維素溶解療法を行ったところ,多量の喀痰が出現,この吸引により呼吸不全となった.治療により改善したが,線維素溶解療法による有瘻性膿胸の瘻孔の開通と考えた.手術は胸腔鏡下で行い,膿胸内容物を除去したところ肺に径約1cmの瘻孔が認められた.同部に抗菌薬を浸したゼラチンスポンジを充填した.術後空気漏れを認めず,術後11日で胸腔ドレーンを抜去,以後も良好に経過した.近年は,有瘻性膿胸に対する治療として,瘻孔の責任気管支に気管支鏡下で充填剤を詰めて無瘻化することで治癒を得られる報告が多く見られており,まず考慮すべき治療法と考えるが,本症例のように術前に瘻孔部位が同定できない有瘻性膿胸に対して,今回の治療法は適用し得ると考える.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.76.2412