卵巣腫瘍との鑑別が困難であった小腸間膜原発神経鞘腫の1例

症例は72歳,女性.腹痛を主訴に当院を受診し,腹部CTで長径約10cmの骨盤内腫瘤が指摘された.年齢や性別などを考慮し,卵巣腫瘍の術前診断で手術が施行された.腫瘍は小腸間膜から発生しており,腸間膜の温存が困難であったため小腸部分切除を施行した.病理組織学的所見では,楕円~紡錘形の核を有する細胞が,束状あるいは柵状配列を呈して増生する細胞密度の高い部分と,浮腫状の間質を背景にする細胞密度の低い部分が認められた.免疫組織化学染色ではS-100蛋白(+)を示し,小腸間膜原発神経鞘腫と診断した. 小腸間膜原発神経鞘腫は非常に稀であり,本症例のように年齢・性別から卵巣腫瘍と診断されるなど,正確な術前診断...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 76; no. 12; pp. 3013 - 3017
Main Authors 白石, 淳一, 石, 志紘, 島田, 敦, 西原, 佑一, 磯部, 陽, 浦上, 秀次郎, 大石, 崇
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2015
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.76.3013

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Summary:症例は72歳,女性.腹痛を主訴に当院を受診し,腹部CTで長径約10cmの骨盤内腫瘤が指摘された.年齢や性別などを考慮し,卵巣腫瘍の術前診断で手術が施行された.腫瘍は小腸間膜から発生しており,腸間膜の温存が困難であったため小腸部分切除を施行した.病理組織学的所見では,楕円~紡錘形の核を有する細胞が,束状あるいは柵状配列を呈して増生する細胞密度の高い部分と,浮腫状の間質を背景にする細胞密度の低い部分が認められた.免疫組織化学染色ではS-100蛋白(+)を示し,小腸間膜原発神経鞘腫と診断した. 小腸間膜原発神経鞘腫は非常に稀であり,本症例のように年齢・性別から卵巣腫瘍と診断されるなど,正確な術前診断は困難とされている.診断的治療として外科的切除が第一選択とされるが,悪性腫瘍である可能性も考慮して治療方針を決定すべきであり,術前診断・治療方針に関し文献的考察を加えて報告する.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.76.3013