痛みセンターにおける慢性疼痛の集学的治療:歴史と展望

慢性疼痛は,患者に苦痛を与え生活の質を低下させるだけでなく,就労を困難にし,社会全体の医療費負担を増大させる社会的問題である.1960年にJohn BonicaによってWashington大学で始められた集学的痛み治療は,1980年代に生物心理社会モデルを取り入れて発展し,現在では慢性疼痛に対する重要な治療法と位置づけられている.この治療法は欧米諸国に広まり,各国では慢性疼痛対策の一環として集学的痛みセンターが整備されている.わが国でも,2009年から厚生労働省が慢性疼痛対策を本格化させ,集学的痛みセンターの設立を推進している.集学的治療は多職種が連携し,生物心理社会モデルに基づく包括的な治療...

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Published in日本ペインクリニック学会誌 Vol. 32; no. 5; pp. 87 - 95
Main Authors 森脇, 克行, 吉野, 敦雄, 堤, 保夫, 牛尾, 会, 西原, 希里子, 塩田, 繁人, 中村, 隆治
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本ペインクリニック学会 25.05.2025
日本ペインクリニック学会
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ISSN1340-4903
1884-1791
DOI10.11321/jjspc.24-0059

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Summary:慢性疼痛は,患者に苦痛を与え生活の質を低下させるだけでなく,就労を困難にし,社会全体の医療費負担を増大させる社会的問題である.1960年にJohn BonicaによってWashington大学で始められた集学的痛み治療は,1980年代に生物心理社会モデルを取り入れて発展し,現在では慢性疼痛に対する重要な治療法と位置づけられている.この治療法は欧米諸国に広まり,各国では慢性疼痛対策の一環として集学的痛みセンターが整備されている.わが国でも,2009年から厚生労働省が慢性疼痛対策を本格化させ,集学的痛みセンターの設立を推進している.集学的治療は多職種が連携し,生物心理社会モデルに基づく包括的な治療を提供する.本稿では,内外の文献を基に,慢性疼痛に対する集学的治療,生物心理社会モデル,痛みセンターの機能とその地域医療における役割について,歴史的経緯と意義をナラティブレビューした.過去半世紀の文献は,痛みセンターにおける集学的アプローチが,地域社会における慢性疼痛治療と痛みの医学の発展に重要な役割を果たす可能性を示している.
ISSN:1340-4903
1884-1791
DOI:10.11321/jjspc.24-0059