右冠尖が2つ折りになって生じた大動脈弁閉鎖不全の1例

右冠尖が2つ折り状態になったために発症した大動脈弁閉鎖不全症の1例を経験した.症例は76歳女性,呼吸困難の精査治療のため入院した.胸部レントゲンで高度の心拡大と葉間胸水貯留が,大動脈造影でIV度の逆流と右冠動脈起始部の異常な拡張が認められた.手術所見として右冠尖が2つに折り畳まれた状態になって右Valsalva洞全体を占めるほど大きな右冠動脈入口部を半ば塞いでいた.右冠尖は他の冠尖に比べて明らかに大きく自由縁の長さは右冠尖23 mm,左冠尖18 mm,無冠尖17 mmであった.弁を切除し自己心膜による大動脈弁再建術を施行した.病理組織検査では炎症細胞の浸潤はごく軽度で細菌感染の所見はなかった....

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Published in日本心臓血管外科学会雑誌 Vol. 45; no. 4; pp. 176 - 179
Main Authors 藤井, 奨, 柏村, 千尋, 志村, 一馬, 澤, 重治, 山邊, 健太朗
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会 2016
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ISSN0285-1474
1883-4108
DOI10.4326/jjcvs.45.176

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Summary:右冠尖が2つ折り状態になったために発症した大動脈弁閉鎖不全症の1例を経験した.症例は76歳女性,呼吸困難の精査治療のため入院した.胸部レントゲンで高度の心拡大と葉間胸水貯留が,大動脈造影でIV度の逆流と右冠動脈起始部の異常な拡張が認められた.手術所見として右冠尖が2つに折り畳まれた状態になって右Valsalva洞全体を占めるほど大きな右冠動脈入口部を半ば塞いでいた.右冠尖は他の冠尖に比べて明らかに大きく自由縁の長さは右冠尖23 mm,左冠尖18 mm,無冠尖17 mmであった.弁を切除し自己心膜による大動脈弁再建術を施行した.病理組織検査では炎症細胞の浸潤はごく軽度で細菌感染の所見はなかった.右冠尖が2つ折りになった機序として他の冠尖より大きかったこと,異常に拡張した右冠動脈がValsalva洞での正常な渦血流の作製を妨げて弁尖を右冠動脈入口部に引き込むような力が働いた可能性があることなどが推察された.
ISSN:0285-1474
1883-4108
DOI:10.4326/jjcvs.45.176