結腸癌術後,胆管癌術後に転移性肝癌との鑑別に難渋した肝炎症性偽腫瘍の1例
症例は70歳代,男性.2013年横行結腸切除術,2015年3月に胆管癌に肝外胆管切除術施行,当院外科にて経過観察されていた.胆管癌術後5カ月の腹部造影CT検査で肝S5,S6に腫瘤性病変を認め,腹部MRI検査,腹部超音波検査でも肝右葉に複数の腫瘤性病変を認めた.転移性肝癌を疑い,原発巣確定目的に経皮的肝腫瘍生検施行した.病理所見で悪性像はなく,線維化が著明で一部に好中球浸潤を伴う慢性炎症細胞浸潤を認め,病変部周囲の背景肝における反復性の上行性の胆管炎によると考えられる線維化の所見とも合わせ炎症性偽腫瘍と診断した.本症例は胆管癌手術前のERCP後に膵炎,胆管炎を発症した経緯を持ち,胆管癌術後には縫...
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Published in | 肝臓 Vol. 58; no. 4; pp. 241 - 247 |
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Main Authors | , , , , , , , , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本肝臓学会
2017
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Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 0451-4203 1881-3593 |
DOI | 10.2957/kanzo.58.241 |
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Summary: | 症例は70歳代,男性.2013年横行結腸切除術,2015年3月に胆管癌に肝外胆管切除術施行,当院外科にて経過観察されていた.胆管癌術後5カ月の腹部造影CT検査で肝S5,S6に腫瘤性病変を認め,腹部MRI検査,腹部超音波検査でも肝右葉に複数の腫瘤性病変を認めた.転移性肝癌を疑い,原発巣確定目的に経皮的肝腫瘍生検施行した.病理所見で悪性像はなく,線維化が著明で一部に好中球浸潤を伴う慢性炎症細胞浸潤を認め,病変部周囲の背景肝における反復性の上行性の胆管炎によると考えられる線維化の所見とも合わせ炎症性偽腫瘍と診断した.本症例は胆管癌手術前のERCP後に膵炎,胆管炎を発症した経緯を持ち,胆管癌術後には縫合不全による腹腔内膿瘍形成を認めた.術後はCRP軽度陽性が継続し,胆道系酵素の上昇と炎症所見の軽快,増悪を繰り返している.慢性的な胆管炎による炎症性偽腫瘍は稀と考え,貴重な症例と考え報告する. |
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ISSN: | 0451-4203 1881-3593 |
DOI: | 10.2957/kanzo.58.241 |