高位胸髄損傷を基礎疾患に有するS状結腸穿孔の1例

症例は30代の男性.既往に胸髄損傷(Th4-5)および複数回にわたる腎盂腎炎あり.2日前からの尿量低下,腹満感を主訴に救急外来受診.採血上炎症反応高値であるも,腹部症状を特に認めず.尿路感染の再燃と診断された.入院後抗生剤による治療を開始したが改善が得られず.複数回の嘔吐を認めたため,腸閉塞を疑い腹部CT検査施行.S状結腸穿孔による汎発性腹膜炎と診断され,同日緊急手術施行.腹腔内には便汁混じりの腹水が充満しており,腹膜炎の程度は強く発症後数日経過したものと考えられた.手術は穿孔部を含むS状結腸切除術および人工肛門造設術を施行した.術後は出血および遺残膿瘍に対し,2回にわたる再手術を行うも,救命...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 76; no. 6; pp. 1434 - 1439
Main Authors 梶原, 大輝, 有明, 恭平, 竹村, 真一, 土井, 孝志, 黒田, 房邦, 野沢, 佳弘
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2015
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.76.1434

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Summary:症例は30代の男性.既往に胸髄損傷(Th4-5)および複数回にわたる腎盂腎炎あり.2日前からの尿量低下,腹満感を主訴に救急外来受診.採血上炎症反応高値であるも,腹部症状を特に認めず.尿路感染の再燃と診断された.入院後抗生剤による治療を開始したが改善が得られず.複数回の嘔吐を認めたため,腸閉塞を疑い腹部CT検査施行.S状結腸穿孔による汎発性腹膜炎と診断され,同日緊急手術施行.腹腔内には便汁混じりの腹水が充満しており,腹膜炎の程度は強く発症後数日経過したものと考えられた.手術は穿孔部を含むS状結腸切除術および人工肛門造設術を施行した.術後は出血および遺残膿瘍に対し,2回にわたる再手術を行うも,救命することができ初回手術後52病日に退院となった. 脊髄損傷患者の腹膜炎は腹部症状の消失から,診断に苦慮することが多い.今回われわれは,早期診断に至らなかった下部消化管穿孔の1例を経験したので報告する.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.76.1434