髄膜癌腫症をきたした大腸印環細胞癌の1例
髄膜癌腫症は,癌細胞が髄腔に播種する病態であり癌性髄膜炎ともいわれる.大腸癌が原発であった髄膜癌腫症は,過去に少数例が報告されているのみである.症例は38歳,男性.腸閉塞の精査で横行結腸印環細胞癌と診断され手術を行った.腹膜播種を伴っており術後化学療法を施行したが,約8カ月後に強い頭痛を生じ髄液細胞診で髄膜癌腫症と診断した.全身状態の安定が得られず抗腫瘍治療は不可能であった.髄腔-腹腔シャントを造設して約1週間の自宅療養期間が得られたが,頭痛発症後約1カ月で死亡した.髄膜癌腫症は,発症すると治療困難なことも多く予後は極めて不良である.髄膜癌腫症が大腸癌から発症することはまれではあるが,組織型が...
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Published in | 日本臨床外科学会雑誌 Vol. 77; no. 5; pp. 1160 - 1165 |
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Main Authors | , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本臨床外科学会
2016
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Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 1345-2843 1882-5133 |
DOI | 10.3919/jjsa.77.1160 |
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Summary: | 髄膜癌腫症は,癌細胞が髄腔に播種する病態であり癌性髄膜炎ともいわれる.大腸癌が原発であった髄膜癌腫症は,過去に少数例が報告されているのみである.症例は38歳,男性.腸閉塞の精査で横行結腸印環細胞癌と診断され手術を行った.腹膜播種を伴っており術後化学療法を施行したが,約8カ月後に強い頭痛を生じ髄液細胞診で髄膜癌腫症と診断した.全身状態の安定が得られず抗腫瘍治療は不可能であった.髄腔-腹腔シャントを造設して約1週間の自宅療養期間が得られたが,頭痛発症後約1カ月で死亡した.髄膜癌腫症は,発症すると治療困難なことも多く予後は極めて不良である.髄膜癌腫症が大腸癌から発症することはまれではあるが,組織型が低分化型や印環細胞癌である場合はその発症頻度は比較的高いとされている.大腸印環細胞癌の診療においては髄膜癌腫症の発症も念頭に置いて,脳神経症状出現の際に速やかに診断し治療すべきと思われた. |
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ISSN: | 1345-2843 1882-5133 |
DOI: | 10.3919/jjsa.77.1160 |