馬蹄腎を合併した破裂性腹部大動脈瘤の1手術例
症例は76歳の男性.肺癌の放射線治療のため,他院入院中に腹痛,ショックを発症した.前医での造影CTにて腹部大動脈瘤の破裂および瘤前面で左右腎下極が癒合する馬蹄腎を認めた.当センター来院時には血圧が38 mmHgと高度ショックを呈していたため,緊急手術を施行した.腹部正中開腹にてI字型人工血管置換術を施行した.腎峡部へ流入する異所性腎動脈を1本結紮処理をしたが,腎峡部は切離せずに温存した.術後,腎機能の悪化は認められず,経過は良好であった.馬蹄腎を合する腹部大動脈瘤症例では,3-DCT等による馬蹄腎の形状,異所性腎動脈の分枝状態の評価が治療方針を決定するうえで重要である.しかしながら,高度ショッ...
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Published in | 日本心臓血管外科学会雑誌 Vol. 41; no. 5; pp. 235 - 237 |
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Main Authors | , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
2012
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Subjects | |
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ISSN | 0285-1474 1883-4108 |
DOI | 10.4326/jjcvs.41.235 |
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Summary: | 症例は76歳の男性.肺癌の放射線治療のため,他院入院中に腹痛,ショックを発症した.前医での造影CTにて腹部大動脈瘤の破裂および瘤前面で左右腎下極が癒合する馬蹄腎を認めた.当センター来院時には血圧が38 mmHgと高度ショックを呈していたため,緊急手術を施行した.腹部正中開腹にてI字型人工血管置換術を施行した.腎峡部へ流入する異所性腎動脈を1本結紮処理をしたが,腎峡部は切離せずに温存した.術後,腎機能の悪化は認められず,経過は良好であった.馬蹄腎を合する腹部大動脈瘤症例では,3-DCT等による馬蹄腎の形状,異所性腎動脈の分枝状態の評価が治療方針を決定するうえで重要である.しかしながら,高度ショックを伴う腹部大動脈瘤破裂症例においては,十分な術前検査を行いえずに緊急手術が必要となる場合がある.かかる症例においては,馬蹄腎と瘤の間の剥離は最小限にとどめ,馬蹄腎峡部は切離しないこと,異所性腎動脈の再建/結紮処理を適切に術中判断することが,救命率の向上,術後合併症の予防に重要であると思われた. |
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ISSN: | 0285-1474 1883-4108 |
DOI: | 10.4326/jjcvs.41.235 |