膝窩動脈外膜嚢腫の1例

症例は60歳の男性で主訴は右下肢の200 m歩行での間歇性跛行であった.Ankle-brachial pressure index(ABI)は0.60と低下を認めたが,心血管疾患の危険因子や下肢の外傷の既往は認めなかった.右膝窩動脈以下の拍動触知は不能で,CT検査では右膝窩部に造影効果のない多房性の腫瘤があり,膝窩動脈が圧排されている所見を認めた.MRI検査ではT1強調像で低信号,T2強調像で高信号に描出される膝窩動脈を圧迫する嚢腫性病変を認めた.さらに下肢血管造影では右膝窩動脈にくちばし状の高度狭窄を認めた.これらの画像検査より膝窩動脈外膜嚢腫と診断した.手術は後方アプローチで膝窩動脈に到達...

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Published in日本心臓血管外科学会雑誌 Vol. 46; no. 4; pp. 182 - 185
Main Authors 大塚, 裕之, 金本, 亮, 廣松, 伸一, 澤田, 健太郎, 庄嶋, 賢弘, 今井, 伸一, 田中, 啓之, 吉田, 尚平
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会 2017
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ISSN0285-1474
1883-4108
DOI10.4326/jjcvs.46.182

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Summary:症例は60歳の男性で主訴は右下肢の200 m歩行での間歇性跛行であった.Ankle-brachial pressure index(ABI)は0.60と低下を認めたが,心血管疾患の危険因子や下肢の外傷の既往は認めなかった.右膝窩動脈以下の拍動触知は不能で,CT検査では右膝窩部に造影効果のない多房性の腫瘤があり,膝窩動脈が圧排されている所見を認めた.MRI検査ではT1強調像で低信号,T2強調像で高信号に描出される膝窩動脈を圧迫する嚢腫性病変を認めた.さらに下肢血管造影では右膝窩動脈にくちばし状の高度狭窄を認めた.これらの画像検査より膝窩動脈外膜嚢腫と診断した.手術は後方アプローチで膝窩動脈に到達した.外膜嚢腫を切開すると,黄色のゼラチン様の内容物を認めた.術前検査で膝窩動脈狭窄部中枢に血栓形成を認めたため,動脈内膜病変があると考え,外膜嚢腫で圧迫された膝窩動脈を自家静脈にて置換術を施行した.術後ABIは1.10と改善し術後経過は良好であった.
ISSN:0285-1474
1883-4108
DOI:10.4326/jjcvs.46.182