膵温存十二指腸部分切除術を行った水平脚十二指腸癌の1例

症例は59歳の男性で,2007年7月より黒色便を自覚し,上下部内視鏡検査施行されたが明らかな異常所見なく経過観察されていた.2009年6月の上部内視鏡検査で十二指腸水平脚にほぼ全周性の2型腫瘍を認め,生検の結果腺癌であった.低緊張性十二指腸造影では十二指腸水平脚から上行脚にかけて狭窄像を認めた.腹部造影CTでは十二指腸水平脚に全周性壁肥厚を認めたが,周囲への浸潤所見は明らかでなかった.水平脚の十二指腸癌と診断し,上腸間膜動脈周囲リンパ節郭清を伴う膵温存十二指腸部分切除術を施行した.再建は側々吻合とし,イレウスチューブを吻合部を超えて挿入し,内ステントとした.病理組織学的には乳頭腺癌で,深達度S...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 74; no. 8; pp. 2172 - 2177
Main Authors 岡崎, 慎史, 平井, 一郎, 竹下, 明子, 菅原, 秀一郎, 渡邊, 利広, 木村, 理
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2013
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.74.2172

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Summary:症例は59歳の男性で,2007年7月より黒色便を自覚し,上下部内視鏡検査施行されたが明らかな異常所見なく経過観察されていた.2009年6月の上部内視鏡検査で十二指腸水平脚にほぼ全周性の2型腫瘍を認め,生検の結果腺癌であった.低緊張性十二指腸造影では十二指腸水平脚から上行脚にかけて狭窄像を認めた.腹部造影CTでは十二指腸水平脚に全周性壁肥厚を認めたが,周囲への浸潤所見は明らかでなかった.水平脚の十二指腸癌と診断し,上腸間膜動脈周囲リンパ節郭清を伴う膵温存十二指腸部分切除術を施行した.再建は側々吻合とし,イレウスチューブを吻合部を超えて挿入し,内ステントとした.病理組織学的には乳頭腺癌で,深達度SS,リンパ節転移,脈管侵襲は認められなかった.術後経過は良好であり,現在術後約4年で再発兆候なく経過観察中である.十二指腸水平部癌はまれな疾患であり,文献的考察と術式の工夫について報告する.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.74.2172