上下肢に同時発症した Axillofemoral bypass graft stump syndrome の1例

Axillofemoral bypass graft stump syndrome(AxSS)は,腋窩-大腿動脈バイパス術後にグラフト閉塞に伴い閉塞グラフト内の血栓が遊離することによる急性動脈閉塞症である.AxSSは上肢発症の報告が多く,下肢への発症は稀である.症例は76歳女性.4年前に臓器虚血を有する急性B型大動脈解離に対し,右腋窩-右外腸骨動脈バイパス術を施行されていたが,今回右上下肢の急性虚血症状にて来院した.造影CTでバイパスグラフトの閉塞とともに,右腋窩-上腕動脈,右腸骨-大腿動脈の閉塞を認めた.さらに,右腋窩動脈と中枢吻合部の変形を認めた.AxSSによる急性動脈閉塞症と診断し,ただ...

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Published in日本心臓血管外科学会雑誌 Vol. 48; no. 4; pp. 277 - 280
Main Authors 新谷, 悠介, 奈田, 慎一, 田中, 啓之, 今井, 伸一, 金本, 亮, 大塚, 裕之, 明石, 英俊, 廣松, 伸一, 音琴, 真也
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会 15.07.2019
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ISSN0285-1474
1883-4108
DOI10.4326/jjcvs.48.277

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Summary:Axillofemoral bypass graft stump syndrome(AxSS)は,腋窩-大腿動脈バイパス術後にグラフト閉塞に伴い閉塞グラフト内の血栓が遊離することによる急性動脈閉塞症である.AxSSは上肢発症の報告が多く,下肢への発症は稀である.症例は76歳女性.4年前に臓器虚血を有する急性B型大動脈解離に対し,右腋窩-右外腸骨動脈バイパス術を施行されていたが,今回右上下肢の急性虚血症状にて来院した.造影CTでバイパスグラフトの閉塞とともに,右腋窩-上腕動脈,右腸骨-大腿動脈の閉塞を認めた.さらに,右腋窩動脈と中枢吻合部の変形を認めた.AxSSによる急性動脈閉塞症と診断し,ただちに血栓除去を行った.右上下肢の血栓をそれぞれ可及的に除去し,さらにグラフト内の血栓が塞栓源と判断し,塞栓の再発予防のため上下肢とも吻合部でグラフトを離断した.術後6カ月の現在,血栓塞栓症の再発はなく経過良好である.AxSSを上下肢に同時発症した非常に稀な症例を経験したので報告する.
ISSN:0285-1474
1883-4108
DOI:10.4326/jjcvs.48.277