術前診断可能であった横行結腸の網嚢内嵌入による大網裂孔ヘルニアの1例

• Published in: 日本臨床外科学会雑誌 Vol. 75; no. 8; pp. 2336 - 2340
• Main Authors: 田中, 千弘, 木山, 茂, 河合, 雅彦, 國枝, 克行, 太和田, 昌宏, 長尾, 成敏
• Format: Journal Article
• Language: Japanese
• Published: 日本臨床外科学会 2014
• Subjects: 大網裂孔ヘルニア; 横行結腸嵌入; 網嚢内嵌入
• ISSN: 1345-2843; 1882-5133
• DOI: 10.3919/jjsa.75.2336

症例は91歳，女性．食欲不振と腹痛，嘔吐を主訴に近医受診しイレウスの診断にて当科紹介となった．腹部は全体に膨隆あるも軟で，軽度圧痛を認めるのみであった．CT検査にて横行結腸脾彎曲付近寄りで閉塞機転を認め，その口側の腸管拡張を認めた．その閉塞部から肛門側の横行結腸が網嚢内に嵌入しており，横行結腸嵌入による大網裂孔ヘルニアと診断して手術を施行した．開腹すると，肝彎曲から20cm肛門側の横行結腸大網付着部に3cm大の裂孔を認め，ここがヘルニア門となり肛門側の横行結腸が網嚢内の小網背側まで嵌入していた．嵌入した横行結腸を還納し，網嚢腔を裂孔部ごと大きく開放して手術を終了した．大網裂孔ヘルニアは比較的まれな疾患とされるが，ほとんどが小腸嵌入の報告例である．自験例のような横行結腸の網嚢内嵌入の報告例は本邦で3例存在するのみであり，さらにCT検査にて術前診断しえた極めて貴重な症例を報告する．