コレステロール結晶塞栓症により繰り返した小腸穿孔の1例

コレステロール結晶塞栓症は血管内粥腫の崩壊,飛散により全身の末梢動脈を閉塞し,多臓器障害をきたす疾患である.症例は86歳の男性で,腹痛を主訴に受診し,CT検査で腹腔内遊離ガスを認めた.消化管穿孔による汎発性腹膜炎の診断で手術を施行し,小腸穿孔を認め小腸部分切除を行った.病理組織学的に小腸壁内の動脈にコレステロール結晶の塞栓を認めた.術後13日目に腹痛を訴え,再度消化管穿孔が示唆され手術を行った.前回吻合部と異なる位置の小腸に穿孔を認め小腸部分切除を施行した.病理組織学的に前回同様の所見であり,コレステロール結晶塞栓症に伴う腸管虚血による穿孔と考えられた.術後,肺炎から敗血症をきたし,初回手術よ...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 77; no. 7; pp. 1672 - 1678
Main Authors 氏家, 直人, 菊池, 寛, 渡辺, 徹雄
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2016
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.77.1672

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Summary:コレステロール結晶塞栓症は血管内粥腫の崩壊,飛散により全身の末梢動脈を閉塞し,多臓器障害をきたす疾患である.症例は86歳の男性で,腹痛を主訴に受診し,CT検査で腹腔内遊離ガスを認めた.消化管穿孔による汎発性腹膜炎の診断で手術を施行し,小腸穿孔を認め小腸部分切除を行った.病理組織学的に小腸壁内の動脈にコレステロール結晶の塞栓を認めた.術後13日目に腹痛を訴え,再度消化管穿孔が示唆され手術を行った.前回吻合部と異なる位置の小腸に穿孔を認め小腸部分切除を施行した.病理組織学的に前回同様の所見であり,コレステロール結晶塞栓症に伴う腸管虚血による穿孔と考えられた.術後,肺炎から敗血症をきたし,初回手術より64日目に死亡した.コレステロール結晶塞栓症による消化管穿孔は致死率が極めて高く,救命のためには術式選択について十分に検討する必要があるとともに,全身状態に応じた対症療法の継続が必要不可欠である.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.77.1672