鼻内内視鏡手術を行った先天性鼻涙管嚢胞例

先天性鼻涙管嚢胞は先天性に鼻涙管が閉塞し,主に下鼻道に嚢胞を形成する疾患で,嚢胞の大きさによっては呼吸障害をきたしうる。今回我々は内視鏡下に造袋術を行った先天性鼻涙管嚢胞例を経験したので報告する。症例は男児で,出生後からの呼吸障害にて日齢2より経鼻持続陽圧送気を行った。鼻内所見では左下鼻道を占拠し内側に下鼻甲介を圧排する腫瘤性病変を認めた。CT,MRIでは左涙嚢,鼻涙管から下鼻道にかけて連続する軟部影が見られ,特徴的な形態から先天性鼻涙管嚢胞と診断した。その後,経過観察中に酸素飽和度の急激な低下を繰り返し,人工呼吸器管理となった。呼吸障害の原因として,喉頭軟化症や喉頭麻痺がないことから中枢性の...

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Published in日本鼻科学会会誌 Vol. 55; no. 4; pp. 544 - 548
Main Authors 今村, 公俊, 堤, 剛, 伊藤, 卓, 小出, 暢章, 東, 裕哉, 山田, 雅人, 渡邊, 浩基, 渡部, 大樹
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本鼻科学会 2016
Subjects
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ISSN0910-9153
1883-7077
DOI10.7248/jjrhi.55.544

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Summary:先天性鼻涙管嚢胞は先天性に鼻涙管が閉塞し,主に下鼻道に嚢胞を形成する疾患で,嚢胞の大きさによっては呼吸障害をきたしうる。今回我々は内視鏡下に造袋術を行った先天性鼻涙管嚢胞例を経験したので報告する。症例は男児で,出生後からの呼吸障害にて日齢2より経鼻持続陽圧送気を行った。鼻内所見では左下鼻道を占拠し内側に下鼻甲介を圧排する腫瘤性病変を認めた。CT,MRIでは左涙嚢,鼻涙管から下鼻道にかけて連続する軟部影が見られ,特徴的な形態から先天性鼻涙管嚢胞と診断した。その後,経過観察中に酸素飽和度の急激な低下を繰り返し,人工呼吸器管理となった。呼吸障害の原因として,喉頭軟化症や喉頭麻痺がないことから中枢性の嚥下障害による誤嚥等を疑ったが,鼻涙管嚢胞による鼻閉も増悪因子と考えて,日齢66で鼻内内視鏡下にマイクロデブリッダーを用いた造袋術を行った。全身麻酔下に細径内視鏡にて左鼻腔内を観察し,涙点から中村式涙管洗浄用二段針で希釈ヨード液を注入して涙嚢と嚢胞の交通を確認した。嚢胞はマイクロデブリッダーを用いて十分に切除した。次に右鼻腔内も観察し,右下鼻道には病変を認めないことを確認して,手術を終了した。止血用のパッキングは必要なかった。特に術後合併症は認められず嚢胞は完全に開放されたが,呼吸障害は十分に改善されなかった。本症例では呼吸障害の主因は核上性麻痺による嚥下障害と思われたが,鼻涙管嚢胞に対する内視鏡とマイクロデブリッダーを使用した造袋術は安全で効果的な治療法だと考えられた。
ISSN:0910-9153
1883-7077
DOI:10.7248/jjrhi.55.544