巨大遠位弓部大動脈瘤肺動脈穿破の1例
症例は68歳女性.1カ月前から咳嗽・呼吸困難を自覚し,さらに動悸も出現したため前医を受診した.レントゲン上で左胸水の貯留を認め,利尿剤内服による保存的加療を受けたが改善しないため,CT撮影したところ遠位弓部に9 cmの大動脈瘤を認めた.左胸水貯留が増悪しており胸部大動脈瘤破裂と診断され,手術目的に当科紹介となった.来院後造影CTを撮影すると,左胸水がさらに増加しており緊急手術の方針となった.手術は,胸骨正中切開でアプローチし,上行大動脈送血,上下大静脈脱血にて体外循環を確立した.体外循環確立後に右室の急速な拡大を認めたため左房ベントを挿入するも右心系の減圧は得られなかった.このため,主肺動脈に...
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Published in | 日本心臓血管外科学会雑誌 Vol. 48; no. 2; pp. 134 - 137 |
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Main Authors | , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
15.03.2019
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Subjects | |
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ISSN | 0285-1474 1883-4108 |
DOI | 10.4326/jjcvs.48.134 |
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Summary: | 症例は68歳女性.1カ月前から咳嗽・呼吸困難を自覚し,さらに動悸も出現したため前医を受診した.レントゲン上で左胸水の貯留を認め,利尿剤内服による保存的加療を受けたが改善しないため,CT撮影したところ遠位弓部に9 cmの大動脈瘤を認めた.左胸水貯留が増悪しており胸部大動脈瘤破裂と診断され,手術目的に当科紹介となった.来院後造影CTを撮影すると,左胸水がさらに増加しており緊急手術の方針となった.手術は,胸骨正中切開でアプローチし,上行大動脈送血,上下大静脈脱血にて体外循環を確立した.体外循環確立後に右室の急速な拡大を認めたため左房ベントを挿入するも右心系の減圧は得られなかった.このため,主肺動脈にベントを挿入し,分時1 L脱血したところ右心系の減圧が得られた.手術はJ Graft OPEN STENT GRAFT(23 mm×6 cm)を用いた全弓部置換術(J-Graft 24 mm 4分枝)を施行した.術中所見では,胸水の性状は黄色漿液性胸水であり,瘤内を観察すると左肺動脈に接する8 mmの瘻孔を認め,これを直接縫合閉鎖した.術中は動脈管開存と考えていたが術後に検討したところ,大動脈瘤肺動脈穿破と考えられた.術後経過は特に問題なく,術後16日に軽快退院となった.今回われわれは右心不全症状を主訴とする非常に稀な遠位弓部大動脈瘤左肺動脈穿破の1例を経験したため,若干の文献的考察を加えて報告する. |
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ISSN: | 0285-1474 1883-4108 |
DOI: | 10.4326/jjcvs.48.134 |