嗅覚脱失を契機に診断された嗅窩髄膜腫例

嗅覚障害は耳鼻咽喉科医がよく遭遇する病態であるが,原因が特定できない場合も多く,中には稀に頭蓋内疾患による症状であることもある。今回我々は,数ヶ月前から徐々に進行する嗅覚味覚障害を主訴に来院し,Magnetic Resonance Image(MRI)にて嗅窩髄膜腫による嗅覚障害と診断された47歳女性の症例を経験したので報告する。症例の感冒・外傷歴はなく,鼻内・口腔内また神経学的異常所見は認めず,副鼻腔単純Computed Tomography(CT)においても明らかな異常所見は認められなかった。基準嗅力検査,静脈性嗅覚検査,カード型嗅覚同定検査ではすべて嗅覚脱失,日常のにおいアンケートは0%...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本鼻科学会会誌 Vol. 60; no. 2; pp. 154 - 158
Main Authors 鄭, 雅誠, 小島, 博己, 滝澤, 悠己, 関根, 瑠美, 永井, 萌南美, 森, 恵莉, 鴻, 信義
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本鼻科学会 2021
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN0910-9153
1883-7077
DOI10.7248/jjrhi.60.154

Cover

More Information
Summary:嗅覚障害は耳鼻咽喉科医がよく遭遇する病態であるが,原因が特定できない場合も多く,中には稀に頭蓋内疾患による症状であることもある。今回我々は,数ヶ月前から徐々に進行する嗅覚味覚障害を主訴に来院し,Magnetic Resonance Image(MRI)にて嗅窩髄膜腫による嗅覚障害と診断された47歳女性の症例を経験したので報告する。症例の感冒・外傷歴はなく,鼻内・口腔内また神経学的異常所見は認めず,副鼻腔単純Computed Tomography(CT)においても明らかな異常所見は認められなかった。基準嗅力検査,静脈性嗅覚検査,カード型嗅覚同定検査ではすべて嗅覚脱失,日常のにおいアンケートは0%,Visual Analogue Scale(VAS)は10/100 mmであった。また,電気味覚検査とろ紙ディスク法では異常所見なく,血液検査でも特記すべき所見は認めなかった。若年で,原因が特定できない嗅覚脱失であり,中枢性嗅覚障害鑑別のため頭部単純MRIを追加したところ,嗅窩部に長径約4 cmの頭蓋内腫瘍性病変を認めた。脳神経外科にて開頭腫瘍摘出し,髄膜腫と診断された。嗅窩髄膜腫は多くの症例で嗅覚障害を認めるが,通常は脳神経症状や意識障害などを契機に発見されることが多い。本症例は症状が嗅覚味覚障害のみで前頭葉圧迫症状は認めず,嗅覚障害の原因検索としてのMRIを施行したことが診断につながった。原因が特定できない嗅覚障害を診察した際には,脳腫瘍も含めた中枢性嗅覚障害を念頭にMRIを考慮することは重要であると考えた。
ISSN:0910-9153
1883-7077
DOI:10.7248/jjrhi.60.154