抗凝固療法で治癒した出血性胃潰瘍併存大動脈弁位血栓弁の1例

症例は72歳,女性.2011年6月に大動脈弁狭窄症に対して大動脈弁置換術(SJM Regent弁19mm)を施行した.他院で行われていたワルファリンコントロールは不良であった.2014年7月,倦怠感とタール便を訴え,救急搬送され,出血性胃潰瘍と診断され内視鏡的止血術を受けた.第2病日の心エコー検査で人工弁圧較差の増大を認め,弁透視検査にて人工弁の一葉が半閉鎖位で固定しており,人工弁機能不全と診断した.心不全症状を認めず,緊急手術は不要と判断し,出血性胃潰瘍の止血を確認後,ヘパリンとワルファリンによる抗凝固療法を継続した.第45病日に施行した弁透視で人工弁葉の可動性の改善傾向を認め,ワルファリン...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 77; no. 6; pp. 1358 - 1362
Main Authors 瀬尾, 浩之, 青山, 孝信, 笹子, 佳門, 藤井, 弘通
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2016
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.77.1358

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Summary:症例は72歳,女性.2011年6月に大動脈弁狭窄症に対して大動脈弁置換術(SJM Regent弁19mm)を施行した.他院で行われていたワルファリンコントロールは不良であった.2014年7月,倦怠感とタール便を訴え,救急搬送され,出血性胃潰瘍と診断され内視鏡的止血術を受けた.第2病日の心エコー検査で人工弁圧較差の増大を認め,弁透視検査にて人工弁の一葉が半閉鎖位で固定しており,人工弁機能不全と診断した.心不全症状を認めず,緊急手術は不要と判断し,出血性胃潰瘍の止血を確認後,ヘパリンとワルファリンによる抗凝固療法を継続した.第45病日に施行した弁透視で人工弁葉の可動性の改善傾向を認め,ワルファリン投与のみで第59病日に退院した.外来での厳重な抗凝固療法の継続により人工弁葉の可動性は完全に改善した.血栓弁に対して再手術,血栓溶解療法を施行せず抗凝固療法のみを継続して治療しえた貴重な症例であった.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.77.1358