重症外傷による免疫反応-自然免疫系と獲得免疫系による制御バランス
重症外傷患者は感染を合併しやすいだけでなく,一旦感染症を合併すると重篤になりやすい。敗血症による多臓器不全を予防することは,重症外傷患者を治療する上で一つの大きな課題である。重症外傷患者では,複雑な生体反応が引き起こされ,免疫系の恒常性が破綻し,これらの合併症を引き起こす。重症外傷受傷後,生体は炎症性の応答を引き起こし,それに引き続き抗炎症性の応答を起こす。これらの免疫修飾は,自然免疫系と獲得免疫系の相互のバランスに基づいて起こっている生体の防御反応であると考えられる。一連の免疫反応は,内因性のシグナルであるalarminと外因性のシグナルであるpathogen-associated mole...
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Published in | 日本救急医学会雑誌 Vol. 24; no. 4; pp. 181 - 191 |
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Main Authors | , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本救急医学会
2013
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Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 0915-924X 1883-3772 |
DOI | 10.3893/jjaam.24.181 |
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Summary: | 重症外傷患者は感染を合併しやすいだけでなく,一旦感染症を合併すると重篤になりやすい。敗血症による多臓器不全を予防することは,重症外傷患者を治療する上で一つの大きな課題である。重症外傷患者では,複雑な生体反応が引き起こされ,免疫系の恒常性が破綻し,これらの合併症を引き起こす。重症外傷受傷後,生体は炎症性の応答を引き起こし,それに引き続き抗炎症性の応答を起こす。これらの免疫修飾は,自然免疫系と獲得免疫系の相互のバランスに基づいて起こっている生体の防御反応であると考えられる。一連の免疫反応は,内因性のシグナルであるalarminと外因性のシグナルであるpathogen-associated molecular pattern moleculesの両者から構成される,damage-associated molecular pattern moleculesがトリガーとなっていると考えられている。近年我々は,外傷によりパターン認識受容体の一つであるインフラマソームが全身のほぼ全ての免疫細胞において活性化することを報告した。外傷によりToll様受容体の反応性が増強することと合わせて,外傷後の自然免疫系による炎症反応が抗菌能力を増強させるとともに,有害な“two-hit response”を形成しうることを示した。また,同時に外傷は主に所属リンパ節における制御性T細胞を活性化することで,過剰に起きた炎症反応をコントロールしていることも示した。外傷に対する生体反応は自然免疫系と獲得免疫系との調和による免疫修飾によって成り立っており,一旦そのバランスが崩れると生体を危機的な状況に陥らせると考えられる。外傷という非特異的な刺激により免疫系が始動するメカニズムと,自然免疫系および獲得免疫系の外傷特異的な応答制御について総説する。 |
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ISSN: | 0915-924X 1883-3772 |
DOI: | 10.3893/jjaam.24.181 |