物忘れの症状と病態

1) 痴呆とは, 脳自体の病的変化によって, 一応発達した知的機能が, 持続的に社会生活に支障をきたす程度に低下した状態をいう. 2) 生理的老化は身体的老化の一つで, 誰にでもみられ, 日常生活に支障はないが, 痴呆は脳の病気により, 一部の人にみられ, 日常生活に支障をきたす. 3) 痴呆の症状は, 記憶の障害, 見当識の障害, 認知・行為・言語の障害, 判断・計算・抽象思考の障害, 意欲・感情・人格の障害, よりなる. 4) 記憶の障害は, 度忘れとは異なり, 新しい記憶から忘れ, 進むと古い記憶も忘れる. 身体で覚えた記憶は忘れにくい. 5) 見当識の障害は, 時間の見当識, 場所の見...

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Published in順天堂医学 Vol. 51; no. 3; pp. 392 - 396
Main Author 井関, 栄三
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 順天堂医学会 2005
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ISSN0022-6769
2188-2134
DOI10.14789/pjmj.51.392

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Summary:1) 痴呆とは, 脳自体の病的変化によって, 一応発達した知的機能が, 持続的に社会生活に支障をきたす程度に低下した状態をいう. 2) 生理的老化は身体的老化の一つで, 誰にでもみられ, 日常生活に支障はないが, 痴呆は脳の病気により, 一部の人にみられ, 日常生活に支障をきたす. 3) 痴呆の症状は, 記憶の障害, 見当識の障害, 認知・行為・言語の障害, 判断・計算・抽象思考の障害, 意欲・感情・人格の障害, よりなる. 4) 記憶の障害は, 度忘れとは異なり, 新しい記憶から忘れ, 進むと古い記憶も忘れる. 身体で覚えた記憶は忘れにくい. 5) 見当識の障害は, 時間の見当識, 場所の見当識, 人物の見当識の障害よりなる. 6) 認知・行為・言語の障害は, 親しい人の顔が判らない失認, 服が正しく着られない失行, 適切な文章・単語がでない失語よりなる. 7) 判断・計算・抽象思考の障害は, 作業の間違いが多い, 家計簿の計算ができない, 想像力がなくなる, などよりなる. 8) 意欲・感情・人格の障害として, 自発性に乏しい, 怒りっぽい, 多幸的, などがある. 9) 痴呆に伴う精神症状・行動異常として, 抑うつ状態, 幻覚, 妄想, 興奮, 俳徊などがある. 10) 痴呆は年齢とともに増加し, 80歳を境に急激に増加する. アルツハイマー型痴呆が血管性痴呆より多い. 11) 軽度認知障害 (MCI) とは, 記憶障害を認めるが, 認知機能障害がそれ以外に及ばない状態をいう. 12) 高齢者のうつ病の特徴として, 抑うつ気分・精神運動抑制が目立たない, 不安・焦燥・心気・妄想が目立つ, などが挙げられる. 仮性痴呆は, 痴呆と間違われ易いが, うつ病の治療により改善するものをいう. 13) うつ病の痴呆への移行が報告されている, 器質性うつ状態として, 脳血管障害に伴ううつ状態と変性疾患に伴ううつ状態とがある.
ISSN:0022-6769
2188-2134
DOI:10.14789/pjmj.51.392