回転原体照射による術後放射線療法が奏功した心臓血管肉腫の1例

心臓血管肉腫は稀な疾患であり,生命予後はきわめて不良とされている.われわれは,術後放射線治療が奏功し長期生存が得られている症例を経験したので報告する.症例は71歳,女性.主訴は全身倦怠感,下腿浮腫.経胸壁心エコーおよびCTで多量の心嚢液貯留と右房に腫瘤を認め,手術を行った.右房と下大静脈接合部に大きな血腫を伴う腫瘍を認め,右房壁,下大静脈,横隔膜,右側心膜に浸潤していた.完全切除を断念し,体外循環下に右房壁を一部切除し右房壁の欠損部をウシ心膜パッチで修復した.術後病理検査で,心臓血管肉腫の診断であり,切除断端陽性であった.術後11日目から術後放射線療法(回転原体照射10MV-X線,54 Gy/...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本心臓血管外科学会雑誌 Vol. 42; no. 5; pp. 420 - 424
Main Authors 吉本, 公洋, 安達, 昭, 大場, 淳一, 奥山, 淳, 宮武, 司, 増田, 貴彦, 青木, 秀俊
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会 2013
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN0285-1474
1883-4108
DOI10.4326/jjcvs.42.420

Cover

More Information
Summary:心臓血管肉腫は稀な疾患であり,生命予後はきわめて不良とされている.われわれは,術後放射線治療が奏功し長期生存が得られている症例を経験したので報告する.症例は71歳,女性.主訴は全身倦怠感,下腿浮腫.経胸壁心エコーおよびCTで多量の心嚢液貯留と右房に腫瘤を認め,手術を行った.右房と下大静脈接合部に大きな血腫を伴う腫瘍を認め,右房壁,下大静脈,横隔膜,右側心膜に浸潤していた.完全切除を断念し,体外循環下に右房壁を一部切除し右房壁の欠損部をウシ心膜パッチで修復した.術後病理検査で,心臓血管肉腫の診断であり,切除断端陽性であった.術後11日目から術後放射線療法(回転原体照射10MV-X線,54 Gy/18回/4.5週間の分割照射(通常分割64 Gy相当))を行った.照射終了後1カ月のCTで腫瘍の縮小が見られ,照射18カ月後の心エコーでは腫瘍は痕跡程度の残存のみでほぼ消失していた.放射線治療の発達により,術後放射線療法が原発巣の局所制御に有効である可能性があり,完全切除が不可能であっても,術後放射線療法を行うことでquality of lifeの維持および生命予後の改善が期待できると考えられた.
ISSN:0285-1474
1883-4108
DOI:10.4326/jjcvs.42.420