経カテーテル的動脈塞栓術と胸腔鏡による血腫除去により軽快した自然血気胸の1例

血管塞栓術が有効であった自然血気胸の1例を経験した。症例は20歳の女性で,誘因なく右背部痛を自覚した。呼吸苦・疼痛が増強し,近医を受診して当院救急外来を紹介となり,転院搬送となった。胸部X線検査で右胸腔内の貯留液と肺の虚脱を認め,CTで縦隔のシフトを伴っていた。胸腔ドレーンを挿入すると約700mLの血性の排液を認め,自然血気胸と診断した。持続する出血を認め,翌日当科紹介となったが,バイタルサインが比較的安定していたこともあり血管撮影を施行した。右気管支動脈造影を行うと気管支動脈から第2・3肋間動脈が分岐しており,この末梢に異常血管を認めたため,n-butyl-2-cyanoacrylateで塞...

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Published in日本救急医学会雑誌 Vol. 25; no. 4; pp. 165 - 170
Main Authors 永田, 二郎, 野嵜, 悠太郎, 平林, 祥, 中村, 俊介, 大西, 英二, 家出, 清継, 川井, 陽平
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本救急医学会 2014
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ISSN0915-924X
1883-3772
DOI10.3893/jjaam.25.165

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Summary:血管塞栓術が有効であった自然血気胸の1例を経験した。症例は20歳の女性で,誘因なく右背部痛を自覚した。呼吸苦・疼痛が増強し,近医を受診して当院救急外来を紹介となり,転院搬送となった。胸部X線検査で右胸腔内の貯留液と肺の虚脱を認め,CTで縦隔のシフトを伴っていた。胸腔ドレーンを挿入すると約700mLの血性の排液を認め,自然血気胸と診断した。持続する出血を認め,翌日当科紹介となったが,バイタルサインが比較的安定していたこともあり血管撮影を施行した。右気管支動脈造影を行うと気管支動脈から第2・3肋間動脈が分岐しており,この末梢に異常血管を認めたため,n-butyl-2-cyanoacrylateで塞栓を行った。以後胸腔ドレーンからの血性排液は停止したものの,胸腔内に残留した血腫の除去に難渋し,塞栓術の3日後に胸腔鏡下血腫除去を行った。術中血腫以外に新たな出血は認めなかった。肺尖部付近の肋骨下縁から連続する索状構造がみられ異常血管と考えられた。右肺は全体に凝血塊に被われていたが,良好な視野のもと掻破・吸引により約400mLの血腫を除去した。術後経過は良好で第8病日に退院となり,以後血気胸の再発は認めていない。自然血気胸は出血量が2,000mL以上に及んでショック症状を呈し,早急な対応が必要となる場合がある。本疾患に対する経カテーテル的動脈塞栓術は,ショックを認めない症例や胸腔鏡下手術のhigh risk症例などに対して治療の選択肢の一つになりうると考えられた。
ISSN:0915-924X
1883-3772
DOI:10.3893/jjaam.25.165