治療方針に苦慮した成人右側Bochdalek孔ヘルニアの1例
症例は66歳,女性.前日からの心窩部~右季肋部にかけての痛みを主訴に来院.皮膚は黄染し,高度の炎症反応,意識障害,血圧低下など敗血症状態であった.CTでは肝曲部結腸と肝右葉の一部および高度に腫大した胆嚢が右胸腔内に存在し,右肺下葉の受動無気肺,胸水貯留,総胆管結石,肝内胆管の拡張,肝左葉の腫大と左方変位も認めた.結腸,肝右葉の一部と胆嚢を内容とした右Bochdalek孔ヘルニア状態での急性胆嚢・胆管炎と診断した.治療方針に苦慮したが,ヘルニア内容である肝および結腸の血流は維持されており,通過障害も呈していないことから,緊急手術とはせず胆道炎からの離脱を目的として肝左葉から同日PTCD(perc...
Saved in:
Published in | 日本臨床外科学会雑誌 Vol. 81; no. 9; pp. 1755 - 1761 |
---|---|
Main Authors | , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本臨床外科学会
2020
|
Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 1345-2843 1882-5133 |
DOI | 10.3919/jjsa.81.1755 |
Cover
Summary: | 症例は66歳,女性.前日からの心窩部~右季肋部にかけての痛みを主訴に来院.皮膚は黄染し,高度の炎症反応,意識障害,血圧低下など敗血症状態であった.CTでは肝曲部結腸と肝右葉の一部および高度に腫大した胆嚢が右胸腔内に存在し,右肺下葉の受動無気肺,胸水貯留,総胆管結石,肝内胆管の拡張,肝左葉の腫大と左方変位も認めた.結腸,肝右葉の一部と胆嚢を内容とした右Bochdalek孔ヘルニア状態での急性胆嚢・胆管炎と診断した.治療方針に苦慮したが,ヘルニア内容である肝および結腸の血流は維持されており,通過障害も呈していないことから,緊急手術とはせず胆道炎からの離脱を目的として肝左葉から同日PTCD(percutaneous transhepatic cholangio drainage)を留置した.ドレナージにより胆管だけでなく胆嚢の炎症も速やかに消退し,経口摂取も可能となった.内視鏡的に総胆管結石を採石後,治療開始から58日目に一期的にBochdalek孔ヘルニア根治術および胆嚢摘出術を同時に行った.経過は良好で,術後11日目に退院となった. |
---|---|
ISSN: | 1345-2843 1882-5133 |
DOI: | 10.3919/jjsa.81.1755 |