門脈本幹腫瘍塞栓の自然退縮を認めた肝細胞癌の1例

症例は63歳の男性.1カ月前より腹部膨満感が出現したために近医を受診したところ,腹部超音波にて腹水を伴った肝硬変および肝腫瘍の所見をみとめた.HCV抗体陽性であり,肝細胞癌の合併が疑われたため,当科を紹介受診した.ダイナミックCTでは,複数の多血性肝細胞癌(HCC)と門脈本幹の腫瘍塞栓(PVTT)をみとめた.肝予備能は不良であり,十分なインフォームドコンセントの結果,治療介入は行わずにbest supportive careの方針となった.禁酒をした上で肝庇護剤および利尿剤の内服をしつつ自宅療養を行っていたところ,腹水の消失をみとめ,当科初診後6カ月の時点で精査・加療目的で入院となった.ダイナ...

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Published in肝臓 Vol. 57; no. 4; pp. 178 - 185
Main Authors 大岡, 美彦, 千葉, 哲博, 齊藤, 朋子, 太和田, 暁之, 岸本, 充, 小笠原, 定久, 関本, 匡, 若松, 徹, 鈴木, 英一郎, 横須賀, 收, 井上, 将法, 丸山, 紀史
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本肝臓学会 2016
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ISSN0451-4203
1881-3593
DOI10.2957/kanzo.57.178

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Summary:症例は63歳の男性.1カ月前より腹部膨満感が出現したために近医を受診したところ,腹部超音波にて腹水を伴った肝硬変および肝腫瘍の所見をみとめた.HCV抗体陽性であり,肝細胞癌の合併が疑われたため,当科を紹介受診した.ダイナミックCTでは,複数の多血性肝細胞癌(HCC)と門脈本幹の腫瘍塞栓(PVTT)をみとめた.肝予備能は不良であり,十分なインフォームドコンセントの結果,治療介入は行わずにbest supportive careの方針となった.禁酒をした上で肝庇護剤および利尿剤の内服をしつつ自宅療養を行っていたところ,腹水の消失をみとめ,当科初診後6カ月の時点で精査・加療目的で入院となった.ダイナミックCTおよび造影超音波の結果,門脈腫瘍栓は著明な退縮傾向を示した.HCCの肝内病変に関しては残存していたため,肝動脈化学塞栓術(TACE)を施行し,良好な治療効果を得た.退院後6カ月が経過したが,外来にて経過観察中である.
ISSN:0451-4203
1881-3593
DOI:10.2957/kanzo.57.178