移植後維持療法の現在と将来展望

造血細胞移植後の再発は,現代の移植医療が解決すべき最重要課題のひとつである。この10年間,ゲノミクスの進歩を背景として新しい抗腫瘍薬開発が着実に進捗している。これまでの移植では,高強度前処置と同種免疫反応によって残存腫瘍の根絶が目指されたが,最近では新規薬剤を移植の前後に組み込み,①移植前の残存腫瘍量を最小化するとともに(移植ブリッジング),②移植後治療で再発を抑制する(移植後維持療法),という新たな戦略が模索されている。特に標的を有する病型における移植後維持療法は,その安全性と有効性が明らかにされ,移植医療のシェーマそのものを書き換えつつある。今後のゲノムスクリーニングと高感度MRD測定の臨...

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Published in日本造血・免疫細胞療法学会雑誌 Vol. 13; no. 1; pp. 1 - 13
Main Author 松岡, 賢市
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本造血・免疫細胞療法学会 2024
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ISSN2436-455X
DOI10.7889/tct-23-025

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Summary:造血細胞移植後の再発は,現代の移植医療が解決すべき最重要課題のひとつである。この10年間,ゲノミクスの進歩を背景として新しい抗腫瘍薬開発が着実に進捗している。これまでの移植では,高強度前処置と同種免疫反応によって残存腫瘍の根絶が目指されたが,最近では新規薬剤を移植の前後に組み込み,①移植前の残存腫瘍量を最小化するとともに(移植ブリッジング),②移植後治療で再発を抑制する(移植後維持療法),という新たな戦略が模索されている。特に標的を有する病型における移植後維持療法は,その安全性と有効性が明らかにされ,移植医療のシェーマそのものを書き換えつつある。今後のゲノムスクリーニングと高感度MRD測定の臨床実装は,必要十分な移植後治療を適切に実施する基盤となろう。客観的情報に基づくアプローチが確立できれば,移植後治療においても個別化医療の流れが大きく加速し,より安全で効果的な移植後マネジメントが実現される。
ISSN:2436-455X
DOI:10.7889/tct-23-025