妊娠中に胸腔内破裂をきたした肺動静脈瘻の一例

妊娠中に胸腔内破裂をきたした肺動静脈瘻の症例に対し,胎児の状態も考慮の上,他科との綿密な連携を行い母子ともに救命することができたので報告する.症例は37歳で妊娠32週の妊婦.胸痛と呼吸困難感を主訴に救急受診となった.胸部X線写真上右肺は胸水の貯留により完全無気肺を呈しており,胸水穿刺で血性胸水を確認した.眼瞼の毛細血管拡張や反復性の鼻出血の既往,胸部CTにて左肺に蛇行した血管が流入する病変を認めたことから,遺伝性出血性末梢血管拡張症に関連した右肺動静脈廔の胸腔内破裂による血胸の診断の上緊急手術となった.母体の循環動態はかろうじて安定していたが,胎児機能不全を認めたために産婦人科,小児科,麻酔科...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本呼吸器外科学会雑誌 Vol. 36; no. 1; pp. 36 - 40
Main Authors 北爪, 麻衣, 光井, 卓, 田内, 俊輔
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会 15.01.2022
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN0919-0945
1881-4158
DOI10.2995/jacsurg.36.36

Cover

More Information
Summary:妊娠中に胸腔内破裂をきたした肺動静脈瘻の症例に対し,胎児の状態も考慮の上,他科との綿密な連携を行い母子ともに救命することができたので報告する.症例は37歳で妊娠32週の妊婦.胸痛と呼吸困難感を主訴に救急受診となった.胸部X線写真上右肺は胸水の貯留により完全無気肺を呈しており,胸水穿刺で血性胸水を確認した.眼瞼の毛細血管拡張や反復性の鼻出血の既往,胸部CTにて左肺に蛇行した血管が流入する病変を認めたことから,遺伝性出血性末梢血管拡張症に関連した右肺動静脈廔の胸腔内破裂による血胸の診断の上緊急手術となった.母体の循環動態はかろうじて安定していたが,胎児機能不全を認めたために産婦人科,小児科,麻酔科と相談の上,腰椎麻酔下での帝王切開術を先行した後に,母体に対する全身麻酔下での胸腔鏡下血腫除去・止血術を施行した.術後は母子ともに経過良好で,対側病変も後日手術を施行し,その後再発なく経過している.
ISSN:0919-0945
1881-4158
DOI:10.2995/jacsurg.36.36