胸腔ドレーンによる肺損傷を待機的に治療した1例

症例は77歳男性.気腫合併肺線維症で通院中であったが,咳嗽後の労作時呼吸困難を主訴に胸部単純X線で左気胸と診断された.胸腔ドレナージを開始し,体動時のみごく少量の気瘻が続いた.第7病日に胸部単純X線で右上肺野に浸潤影を認め,胸部単純CTにて右上葉肺炎及び胸腔ドレーンの左上葉内留置を認めた.併発する肺炎により呼吸不全の状態であり,胸腔ドレーン留置のまま呼吸状態の改善を図った.第28病日に全身麻酔下に胸腔ドレーンを抜去した.術中所見では,胸腔ドレーンによる肺刺入部は瘻孔化し,同部位からの気瘻と,抜去に伴う出血は認めなかった.術後43日目に自宅退院となった.胸腔ドレーン留置に伴う肺損傷は緊急手術にな...

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Published in日本呼吸器外科学会雑誌 Vol. 37; no. 1; pp. 36 - 41
Main Authors 尾嶋, 紀洋, 高橋, 智彦, 北村, 直也, 新納, 英樹, 嶋田, 喜文, 川向, 純
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会 15.01.2023
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ISSN0919-0945
1881-4158
DOI10.2995/jacsurg.37.36

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Summary:症例は77歳男性.気腫合併肺線維症で通院中であったが,咳嗽後の労作時呼吸困難を主訴に胸部単純X線で左気胸と診断された.胸腔ドレナージを開始し,体動時のみごく少量の気瘻が続いた.第7病日に胸部単純X線で右上肺野に浸潤影を認め,胸部単純CTにて右上葉肺炎及び胸腔ドレーンの左上葉内留置を認めた.併発する肺炎により呼吸不全の状態であり,胸腔ドレーン留置のまま呼吸状態の改善を図った.第28病日に全身麻酔下に胸腔ドレーンを抜去した.術中所見では,胸腔ドレーンによる肺刺入部は瘻孔化し,同部位からの気瘻と,抜去に伴う出血は認めなかった.術後43日目に自宅退院となった.胸腔ドレーン留置に伴う肺損傷は緊急手術になることが多いが,本例のように待機的手術となる例は珍しい.呼吸状態が危惧される場合,気胸のコントロールが得られていれば,待機的な胸腔ドレーン抜去も選択肢の1つになり得ることが示唆された.
ISSN:0919-0945
1881-4158
DOI:10.2995/jacsurg.37.36