術前診断し得たAmyand’s herniaの1例

症例は80歳,男性。右鼠径部膨隆と食思不振を主訴に紹介受診。腹部超音波検査とCTで右鼠径ヘルニア嵌頓を認めた。嵌頓内容は回盲部から連続する腫大した虫垂で,穿通とヘルニア囊内の膿瘍形成を認め,急性虫垂炎を伴うAmyand’s herniaと診断した。心房細動に対し抗凝固薬を内服していたため入院翌日に全身麻酔での手術とした。前方到達法で鼠径管を開放すると陥頓し穿孔した虫垂によりヘルニア囊は緊満していた。ヘルニア門より腹側で腹膜を切開して腹腔内に到達し,虫垂根部を同定した。腹腔内に膿瘍がないことを確認して,虫垂とともにヘルニア囊を切除した後にMcVay法で修復した。摘出標本の病理所見では,蜂窩織炎性...

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Published in日本腹部救急医学会雑誌 Vol. 39; no. 4; pp. 743 - 746
Main Authors 稲葉, 圭介, 神藤, 修, 鈴木, 昌八, 落合, 秀人, 遠藤, 佑介
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本腹部救急医学会 31.05.2019
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ISSN1340-2242
1882-4781
DOI10.11231/jaem.39.743

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Summary:症例は80歳,男性。右鼠径部膨隆と食思不振を主訴に紹介受診。腹部超音波検査とCTで右鼠径ヘルニア嵌頓を認めた。嵌頓内容は回盲部から連続する腫大した虫垂で,穿通とヘルニア囊内の膿瘍形成を認め,急性虫垂炎を伴うAmyand’s herniaと診断した。心房細動に対し抗凝固薬を内服していたため入院翌日に全身麻酔での手術とした。前方到達法で鼠径管を開放すると陥頓し穿孔した虫垂によりヘルニア囊は緊満していた。ヘルニア門より腹側で腹膜を切開して腹腔内に到達し,虫垂根部を同定した。腹腔内に膿瘍がないことを確認して,虫垂とともにヘルニア囊を切除した後にMcVay法で修復した。摘出標本の病理所見では,蜂窩織炎性虫垂炎で,虫垂の一部が穿通して虫垂間膜内に膿瘍を形成していた。Amyand’s herniaはまれな疾患であり,虫垂炎や腹腔内膿瘍の併存などを考慮して治療,手術を行う必要がある。本症例では画像検査で確定診断が可能であり,鼠径部からの前方到達法のみで手術が完遂できた。
ISSN:1340-2242
1882-4781
DOI:10.11231/jaem.39.743