脳腫瘍術後に脳梗塞をきたし空間定位障害を呈した全盲患者の移動能力について

全盲で空間定位能力障害を合併する脳損傷者の移動能力を検討した。30 歳代女性。右頭頂円蓋部巨大髄膜腫, 開頭腫瘍摘出術後 (楔前部, 頭頂葉外側, 内側部に損傷あり) , 右後大脳動脈領域 (海馬傍回・紡錘状回・舌状回を含む側頭葉内側から後頭葉) に梗塞を生じた。右半球の腫脹あり, 外減圧術・右側頭葉内減圧術が施行された。二次性視神経萎縮による全盲をきたした。自己を中心として対象の位置をとらえることはできたが, 自己または対象の動きが伴うと, 位置関係や運動方向がわからなくなった。触覚的手がかりを用い定点を定めて自己の位置を確認しながら道順を覚えさせ, 目的物や移動の目安を繰り返し言語化しなが...

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Published in高次脳機能研究 (旧 失語症研究) Vol. 38; no. 3; pp. 391 - 398
Main Authors 山本, 正浩, 北條, 具仁, 浦上, 裕子, 野口, 玲子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会 30.09.2018
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ISSN1348-4818
1880-6554
DOI10.2496/hbfr.38.391

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Summary:全盲で空間定位能力障害を合併する脳損傷者の移動能力を検討した。30 歳代女性。右頭頂円蓋部巨大髄膜腫, 開頭腫瘍摘出術後 (楔前部, 頭頂葉外側, 内側部に損傷あり) , 右後大脳動脈領域 (海馬傍回・紡錘状回・舌状回を含む側頭葉内側から後頭葉) に梗塞を生じた。右半球の腫脹あり, 外減圧術・右側頭葉内減圧術が施行された。二次性視神経萎縮による全盲をきたした。自己を中心として対象の位置をとらえることはできたが, 自己または対象の動きが伴うと, 位置関係や運動方向がわからなくなった。触覚的手がかりを用い定点を定めて自己の位置を確認しながら道順を覚えさせ, 目的物や移動の目安を繰り返し言語化しながら誘導することで, 新規の場所でも目的地までの移動が可能となった。全盲で自己身体方向の変化によって位置関係がわからなくなる場合でも, 言語的・触覚的手がかりを用いた歩行訓練で, 統合された空間情報から移動能力を獲得できる可能性がある。
ISSN:1348-4818
1880-6554
DOI:10.2496/hbfr.38.391