上顎洞扁平上皮癌に対する超選択的動注化学療法と放射線照射の同時併用療法の臨床的検討

Robbinsらによって開発された超選択的動注化学療法は,現在では多くの施設で進行上顎洞癌に対して放射線照射と併用した形で施行され良好な成績が報告されている。当院では2009年8月より施行しており,これまで上顎洞扁平上皮癌17例を経験した。シスプラチン100mg/m2の超選択的動注化学療法を放射線照射開始時期に併せて週1回施行し,4回を基本としている。放射線照射が40Gy終了した時に腫瘍の縮小が不十分と判断した症例は放射線照射が終了するまで動注化学療法を週1回併施している。有害事象として,初期に行った症例で脳梗塞を1例,好中球減少症を1例認めたが,腎機能障害はいずれの症例でも認めず,経験のある...

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Published in日本鼻科学会会誌 Vol. 55; no. 1; pp. 34 - 39
Main Authors 南, 和彦, 菅澤, 正
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本鼻科学会 2016
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ISSN0910-9153
1883-7077
DOI10.7248/jjrhi.55.34

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Summary:Robbinsらによって開発された超選択的動注化学療法は,現在では多くの施設で進行上顎洞癌に対して放射線照射と併用した形で施行され良好な成績が報告されている。当院では2009年8月より施行しており,これまで上顎洞扁平上皮癌17例を経験した。シスプラチン100mg/m2の超選択的動注化学療法を放射線照射開始時期に併せて週1回施行し,4回を基本としている。放射線照射が40Gy終了した時に腫瘍の縮小が不十分と判断した症例は放射線照射が終了するまで動注化学療法を週1回併施している。有害事象として,初期に行った症例で脳梗塞を1例,好中球減少症を1例認めたが,腎機能障害はいずれの症例でも認めず,経験のある施設であれば比較的安全性が保たれた治療法と考えられた。また,晩期障害として1年以上遷延する骨髄炎を3例,鼻涙管閉塞症を5例で認めた。鼻涙管閉塞症に対しては3例で涙嚢鼻腔吻合術を施行し,自覚症状は改善した。今回検討した17例では過去の報告と同様に高い奏効率(88.2%)と局所制御率(82.4%)が得られ,良好な治療成績であった。T3およびT4a症例の13例中12例(92.3%)で局所制御が可能であった。一方,T4bの4例は全例が原病死し,局所制御できたのも1例のみであった。今後はT4b症例に対する治療法を見直し,更なる治療成績の向上を図る必要がある。
ISSN:0910-9153
1883-7077
DOI:10.7248/jjrhi.55.34