牽引負荷による脊髄誘発電位の変化と脊髄内血流量の変化

脊髄機能を知る方法として脊髄誘発電位の測定の必要性は, 脊椎外科の進歩と共に高まりつつある. この電位の変化に脊髄内血流量が, いかに関与しているかを知るために以下の実験を行った. ネコ脊髄を用い, 長軸方向への牽引負荷を加えることによる, 脊髄誘発電位の変化と血流量の変化を検討した. 脊髄誘発電位はL1硬膜外後面より刺激し, C2硬膜外後面で記録する上行性の波型の観察を行った. 刺激強度は閾値の2倍から3倍とした. 血流量は水素クリアランス法により, 頸椎後索部位にて経時的に記録を行った. 脊髄誘発電位は基本的には二つの波型から構成されている. 負荷を加えることにより, 潜時の延長傾向, 波...

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Published in順天堂医学 Vol. 32; no. 4; pp. 445 - 455
Main Author 伊藤, 謙三
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 順天堂医学会 1986
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ISSN0022-6769
2188-2134
DOI10.14789/pjmj.32.445

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Summary:脊髄機能を知る方法として脊髄誘発電位の測定の必要性は, 脊椎外科の進歩と共に高まりつつある. この電位の変化に脊髄内血流量が, いかに関与しているかを知るために以下の実験を行った. ネコ脊髄を用い, 長軸方向への牽引負荷を加えることによる, 脊髄誘発電位の変化と血流量の変化を検討した. 脊髄誘発電位はL1硬膜外後面より刺激し, C2硬膜外後面で記録する上行性の波型の観察を行った. 刺激強度は閾値の2倍から3倍とした. 血流量は水素クリアランス法により, 頸椎後索部位にて経時的に記録を行った. 脊髄誘発電位は基本的には二つの波型から構成されている. 負荷を加えることにより, 潜時の延長傾向, 波型持続時間の延長を認める. さらに負荷を加えることにより, 大多数に一過性波高増大を認める. これに引き続き, 急に波型の消失傾向を認める. 血流量は非負荷時平均10.3ml/min/100gであった. 一過性波高増大時には, 血流量は約50%となっている. 波型消失時には血流を認めない. また, 脊髄波の変化を4群に分け, 非可逆性の変化を検討した. 一過性波高増大は注意信号であり, 続いておこってくる波高の減少, 約50%までの変化が脊髄誘発電位の可逆性の変化と思われた.
ISSN:0022-6769
2188-2134
DOI:10.14789/pjmj.32.445