内臓幼虫移行症を証明しえなかった肝好酸球性肉芽腫症の1例

症例は39才,男性で背部痛を主訴に来院した.ペット飼育歴があるが,鮮魚以外の生肉食歴はない.精査で肝S7に1.5 cmの腫瘤を認め,末梢好酸球,IgEは高値を示し,WBC,蛔虫およびアニサキス抗体は軽度高値を示した.画像上腫瘤中央は乏血で,軽度周辺に動脈血流の増生を認めた.上部下部消化管内視鏡検査に異常はなかった.炎症性偽腫瘍ないし好酸球性肉芽腫を疑ったが確定診断がつかず,腹腔鏡下肝部分切除を施行した.病理検査で好酸球性肉芽腫であったが,腫瘍内には虫卵,虫体は認めなかった.術4カ月後現在,再発は認めていない.好酸球性肉芽腫はI型アレルギー反応の一型であり,いずれの臓器にも発症しうる.肝の好酸球...

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Published in肝臓 Vol. 56; no. 3; pp. 96 - 102
Main Authors 福本, 信介, 上西, 崇弘, 山本, 隆嗣, 宮地, 克彦, 大畑, 和則, 田中, 肖吾
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本肝臓学会 2015
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ISSN0451-4203
1881-3593
DOI10.2957/kanzo.56.96

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Summary:症例は39才,男性で背部痛を主訴に来院した.ペット飼育歴があるが,鮮魚以外の生肉食歴はない.精査で肝S7に1.5 cmの腫瘤を認め,末梢好酸球,IgEは高値を示し,WBC,蛔虫およびアニサキス抗体は軽度高値を示した.画像上腫瘤中央は乏血で,軽度周辺に動脈血流の増生を認めた.上部下部消化管内視鏡検査に異常はなかった.炎症性偽腫瘍ないし好酸球性肉芽腫を疑ったが確定診断がつかず,腹腔鏡下肝部分切除を施行した.病理検査で好酸球性肉芽腫であったが,腫瘍内には虫卵,虫体は認めなかった.術4カ月後現在,再発は認めていない.好酸球性肉芽腫はI型アレルギー反応の一型であり,いずれの臓器にも発症しうる.肝の好酸球性肉芽腫はイヌ・ネコ回虫などの寄生虫の内臓幼虫移行症が殆どであるが,虫卵・虫体の証明できない例や,まれに他の原因の好酸球性肉芽腫も報告されており,今後も詳細な問診や検査を行った症例の蓄積が必要と考えられた.
ISSN:0451-4203
1881-3593
DOI:10.2957/kanzo.56.96