胆囊出血により穿孔をきたした胆囊潜在癌の1例

症例は76歳女性で,腹痛と嘔吐を主訴に救急搬送された。血液検査では直接型優位の高ビリルビン血症を認め,腹部CTでは右腹腔内の液体貯留や腫大した胆囊内の動脈性出血,胆囊頸部穿孔,多数の小結石,さらに十二指腸乳頭部付近に結石がみられた。胆囊壁は全体に軽度肥厚していた。胆囊出血による胆囊穿孔の診断で緊急手術の適応とし,胆囊亜全摘出術と粘膜焼灼術を行った。病理組織所見では,標本全体の上皮がT1bの乳頭癌で置換されていた。また,胆囊頸部には動脈の露出した潰瘍が形成され,同部での出血と考えられた。胆囊潜在癌と診断したが,腹膜播種を発症する可能性が高いため追加手術を行わずに化学療法を行った。術後の腹部CTで...

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Published in日本腹部救急医学会雑誌 Vol. 39; no. 1; pp. 055 - 058
Main Authors 石坂, 克彦, 中山, 淳, 中村, 学
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本腹部救急医学会 31.01.2019
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ISSN1340-2242
1882-4781
DOI10.11231/jaem.39.055

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Summary:症例は76歳女性で,腹痛と嘔吐を主訴に救急搬送された。血液検査では直接型優位の高ビリルビン血症を認め,腹部CTでは右腹腔内の液体貯留や腫大した胆囊内の動脈性出血,胆囊頸部穿孔,多数の小結石,さらに十二指腸乳頭部付近に結石がみられた。胆囊壁は全体に軽度肥厚していた。胆囊出血による胆囊穿孔の診断で緊急手術の適応とし,胆囊亜全摘出術と粘膜焼灼術を行った。病理組織所見では,標本全体の上皮がT1bの乳頭癌で置換されていた。また,胆囊頸部には動脈の露出した潰瘍が形成され,同部での出血と考えられた。胆囊潜在癌と診断したが,腹膜播種を発症する可能性が高いため追加手術を行わずに化学療法を行った。術後の腹部CTで右側腹部を主体とした腹膜播種を認め,術後20ヵ月で原病死した。胆囊癌を併発した出血による胆囊穿孔例はまれで,文献的考察を加えて報告する。
ISSN:1340-2242
1882-4781
DOI:10.11231/jaem.39.055