盲腸軸捻・S状結腸軸捻を同時に発症した1例

症例は53歳,男性.幼少期のてんかん,精神発達遅滞の既往あり.嘔気,嘔吐を主訴に前医を受診.腸閉塞の診断で2日間保存的に加療されたが,症状の改善に乏しく,当院へ紹介となった.胸部単純X線写真では,腸管の拡張とniveau像,腹部造影CTでは著明な腸管拡張,右下腹部で上腸間膜静脈を中心に腸間膜組織が渦巻き状に巻き込まれる腫瘤像(“whirl sign”)を認め,腸軸捻に伴う腸閉塞の診断で手術治療の方針となった.開腹すると,結腸全体の著明な拡張,盲腸およびS状結腸の捻転を認め,結腸亜全摘術を施行した.術後は麻痺性イレウスが遷延し,術後約3カ月で退院した.腸軸捻は腸間膜と共に腸管が捻転する病態であり...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 80; no. 2; pp. 362 - 367
Main Authors 市原, 真, 乾野, 幸子, 平社, 亜沙子, 高橋, 周作, 園川, 卓海, 大野, 陽介, 石津, 寛之, 田中, 友香
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2019
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.80.362

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Summary:症例は53歳,男性.幼少期のてんかん,精神発達遅滞の既往あり.嘔気,嘔吐を主訴に前医を受診.腸閉塞の診断で2日間保存的に加療されたが,症状の改善に乏しく,当院へ紹介となった.胸部単純X線写真では,腸管の拡張とniveau像,腹部造影CTでは著明な腸管拡張,右下腹部で上腸間膜静脈を中心に腸間膜組織が渦巻き状に巻き込まれる腫瘤像(“whirl sign”)を認め,腸軸捻に伴う腸閉塞の診断で手術治療の方針となった.開腹すると,結腸全体の著明な拡張,盲腸およびS状結腸の捻転を認め,結腸亜全摘術を施行した.術後は麻痺性イレウスが遷延し,術後約3カ月で退院した.腸軸捻は腸間膜と共に腸管が捻転する病態であり,多くは単独箇所で生じ,複数箇所の捻転が同時に発症することは稀である.今回,盲腸軸捻・S状結腸軸捻を同時に発症した非常に稀な症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.80.362