胎児消化管類似癌を併発した多発胃癌の1例

症例は74歳の男性で,少量の吐血を認めたため前医で内視鏡検査を受け,噴門部,胃体部小彎と近傍の小彎後壁に胃癌を指摘された.加療目的で当院を紹介され腹腔鏡下胃全摘術を施行した.病理組織学的所見で胃体部の病変は一つの病変であり,管状・乳頭状に増殖する淡明な細胞質をもつ円柱細胞を認めた.また,SALL4陽性,AFP陰性,Glypican 3陰性を示し,胎児消化管類似癌の所見と判断した.噴門部の病変は高分化型管状腺癌であった.以上より,胎児消化管類似癌と一般型腺癌が併発した多発胃癌と診断した.胎児消化管類似癌は非常に稀で予後不良であるが,術前診断は困難であり,詳細な病理組織学的検索と術後化学療法の検討...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 81; no. 2; pp. 260 - 266
Main Authors 山縣, 元, 轟木, 秀一, 鈴木, 宏往, 堤, 親範, 田邊, 麗子, 大橋, 生嗣, 山崎, 徹, 中山, 正道
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2020
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.81.260

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Summary:症例は74歳の男性で,少量の吐血を認めたため前医で内視鏡検査を受け,噴門部,胃体部小彎と近傍の小彎後壁に胃癌を指摘された.加療目的で当院を紹介され腹腔鏡下胃全摘術を施行した.病理組織学的所見で胃体部の病変は一つの病変であり,管状・乳頭状に増殖する淡明な細胞質をもつ円柱細胞を認めた.また,SALL4陽性,AFP陰性,Glypican 3陰性を示し,胎児消化管類似癌の所見と判断した.噴門部の病変は高分化型管状腺癌であった.以上より,胎児消化管類似癌と一般型腺癌が併発した多発胃癌と診断した.胎児消化管類似癌は非常に稀で予後不良であるが,術前診断は困難であり,詳細な病理組織学的検索と術後化学療法の検討が重要であると考えられた.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.81.260