トリプシンとトリプシンレセプターの急性膵炎における役割

背景と目的 急性膵炎は一過性の腹部症状のみで軽快する軽症急性膵炎から, 生命維持が困難な重症急性膵炎までさまざまな臨床像を呈する. プロテアーゼによる組織破壊(自己消化)の結果生じる細胞の崩壊産物がサイトカイン産生の刺激になり, 高サイトカイン血症が惹起される. 高サイトカイン血症は全身性炎症反応症候群(systemic inflammatory response syndrome:SIRS)の発症につながり遠隔臓器障害を惹起するため, サイトカインの血中濃度は急性膵炎の重症度と相関する1). 膵臓はトリプシンを始めとしたプロテアーゼの宝庫である. また, 急性膵炎の発症のひきがねはトリプシン...

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Published in膵臓 Vol. 21; no. 1; pp. 33 - 34
Main Authors 市原, 敦史, 大村谷, 昌樹, 杉田, 裕樹, 小川, 道雄, 前田, 圭介, 広田, 昌彦, 木村, 有
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本膵臓学会 2006
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ISSN0913-0071
1881-2805
DOI10.2958/suizo.21.33

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Summary:背景と目的 急性膵炎は一過性の腹部症状のみで軽快する軽症急性膵炎から, 生命維持が困難な重症急性膵炎までさまざまな臨床像を呈する. プロテアーゼによる組織破壊(自己消化)の結果生じる細胞の崩壊産物がサイトカイン産生の刺激になり, 高サイトカイン血症が惹起される. 高サイトカイン血症は全身性炎症反応症候群(systemic inflammatory response syndrome:SIRS)の発症につながり遠隔臓器障害を惹起するため, サイトカインの血中濃度は急性膵炎の重症度と相関する1). 膵臓はトリプシンを始めとしたプロテアーゼの宝庫である. また, 急性膵炎の発症のひきがねはトリプシンの活性制御不全(トリプシンインヒビター(pancreatic secretory pancreatic inhibitor:PSTI)によるトリプシン活性阻害能を超えた量のトリプシン生成による)である2). 本論文3)では, 1)各組織におけるPAR-2の発現, 2)急性膵炎時のPAR-2発現の変化, 3)急性膵炎時の高サイトカイン血症の惹起にPAR-2の活性化が関与するか否か, について検討した.
ISSN:0913-0071
1881-2805
DOI:10.2958/suizo.21.33