ヘルニア嚢内でS状結腸穿孔をきたした鼠径ヘルニア嵌頓の1例

症例は80歳,男性.嘔吐と左鼠径部痛で外来受診.左鼠径部から陰嚢にかけて著明な膨隆と同部位の圧痛を認めた.CTで左陰嚢内にS状結腸が嵌頓しており,陰嚢内に遊離ガスと糞便の貯留を認めた.腹腔内に遊離ガスや腹水は認めず.左鼠径ヘルニア嵌頓によるヘルニア嚢内でのS状結腸穿孔と診断し,緊急手術を行った.開腹するとS状結腸が左外鼠径ヘルニア嚢内に嵌頓しており,還納するとヘルニア嚢内にあったS状結腸の腸間膜付着部に穿孔を認めた.穿孔部には腫瘍や憩室,虚血壊死の所見は認めなかった.Hartmann手術およびヘルニア嚢切除縫縮術を行った.術後にうっ血性心不全と麻痺性イレウスを発症したが保存的治療で軽快し,術後...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 81; no. 1; pp. 101 - 105
Main Authors 林, 忠毅, 宮﨑, 真一郎, 西脇, 由朗, 関本, 晃
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2020
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.81.101

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Summary:症例は80歳,男性.嘔吐と左鼠径部痛で外来受診.左鼠径部から陰嚢にかけて著明な膨隆と同部位の圧痛を認めた.CTで左陰嚢内にS状結腸が嵌頓しており,陰嚢内に遊離ガスと糞便の貯留を認めた.腹腔内に遊離ガスや腹水は認めず.左鼠径ヘルニア嵌頓によるヘルニア嚢内でのS状結腸穿孔と診断し,緊急手術を行った.開腹するとS状結腸が左外鼠径ヘルニア嚢内に嵌頓しており,還納するとヘルニア嚢内にあったS状結腸の腸間膜付着部に穿孔を認めた.穿孔部には腫瘍や憩室,虚血壊死の所見は認めなかった.Hartmann手術およびヘルニア嚢切除縫縮術を行った.術後にうっ血性心不全と麻痺性イレウスを発症したが保存的治療で軽快し,術後40日目に退院した. S状結腸が嵌頓した状態で,嘔吐により腹圧が急激に上昇し,ヘルニア嚢内と腹腔内で圧差が生じて穿孔に至ったと考えられた.鼠径ヘルニア嚢内でS状結腸穿孔をきたした稀な手術例を経験したので報告する.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.81.101