検査中に下部消化管内視鏡が嵌頓した左鼠径ヘルニアの1例

症例は65歳,男性.15年前に左鼠径ヘルニアと診断されたが放置していた.次第に腫脹が増大し,手術を希望して当科を受診した.術前に下部消化管内視鏡検査の希望があり施行した.検査中に内視鏡の挿入・抜去が困難となり,同時に下腹部痛が増強した.左鼠径部に硬い半球状膨隆を認め,緊急CT検査ではヘルニア嚢内にS状結腸と内視鏡が嵌頓していた.直ちに用手的整復を試みるも困難であり,緊急手術の方針とした.全身麻酔下に前方到達法にてヘルニア嚢を切開,少量の血性腹水を認めたが,S状結腸壁に血行障害は認めなかった.漿膜面の一部に挫滅創を認めたため修復した.経肛門的に挿入されている内視鏡を愛護的に抜去した後にS状結腸を...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 80; no. 4; pp. 804 - 808
Main Authors 所, 智和, 堀川, 直樹, 福島, 亘, 薮下, 和久, 宮永, 章平, 眞鍋, 高宏
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2019
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.80.804

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Summary:症例は65歳,男性.15年前に左鼠径ヘルニアと診断されたが放置していた.次第に腫脹が増大し,手術を希望して当科を受診した.術前に下部消化管内視鏡検査の希望があり施行した.検査中に内視鏡の挿入・抜去が困難となり,同時に下腹部痛が増強した.左鼠径部に硬い半球状膨隆を認め,緊急CT検査ではヘルニア嚢内にS状結腸と内視鏡が嵌頓していた.直ちに用手的整復を試みるも困難であり,緊急手術の方針とした.全身麻酔下に前方到達法にてヘルニア嚢を切開,少量の血性腹水を認めたが,S状結腸壁に血行障害は認めなかった.漿膜面の一部に挫滅創を認めたため修復した.経肛門的に挿入されている内視鏡を愛護的に抜去した後にS状結腸を腹腔内へ還納し,direct Kugel 法にてヘルニアを修復した.下部消化管内視鏡の嵌頓は稀な偶発症ではあるが,ヘルニア患者の検査における合併症の一つとして認識しておくことが重要である.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.80.804