矢状断により評価した両側の固有鼻腔内逆生歯牙例

鼻腔内逆生歯の明確な発症機構は解明されていない。今回,稀な両側の鼻腔内逆生歯を4年8ヶ月の経過観察後に摘出した症例を経験したので,本邦における鼻腔内逆生歯の臨床統計を加えて報告する。症例は2歳女児で,咳嗽があり受診した耳鼻咽喉科医院で両側の鼻腔内腫瘤を指摘され,副鼻腔単純CTで両側の鼻腔底に歯牙様の陰影を認めた。低年齢であることと鼻腔内が狭いことを考慮し,保護者の同意が得られた7歳で内視鏡下鼻内術を行い摘出した。両側とも鼻粘膜と有茎性に癒着しているのみで摘出は容易であり,病理組織検査で逆生歯と診断された。術後経過に問題はみられなかった。過去の報告の臨床統計より,逆生歯の6割超は過剰歯由来であり...

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Published in日本鼻科学会会誌 Vol. 63; no. 1; pp. 112 - 118
Main Authors 三浦, 史郎, 沖田, 奈菜, 田中, 藤信, 吉田, 晴郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本鼻科学会 2024
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ISSN0910-9153
1883-7077
DOI10.7248/jjrhi.63.112

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Summary:鼻腔内逆生歯の明確な発症機構は解明されていない。今回,稀な両側の鼻腔内逆生歯を4年8ヶ月の経過観察後に摘出した症例を経験したので,本邦における鼻腔内逆生歯の臨床統計を加えて報告する。症例は2歳女児で,咳嗽があり受診した耳鼻咽喉科医院で両側の鼻腔内腫瘤を指摘され,副鼻腔単純CTで両側の鼻腔底に歯牙様の陰影を認めた。低年齢であることと鼻腔内が狭いことを考慮し,保護者の同意が得られた7歳で内視鏡下鼻内術を行い摘出した。両側とも鼻粘膜と有茎性に癒着しているのみで摘出は容易であり,病理組織検査で逆生歯と診断された。術後経過に問題はみられなかった。過去の報告の臨床統計より,逆生歯の6割超は過剰歯由来であり,両者には診断時年齢,男児に多いなどの共通点があるが,逆生歯が左に多い点のみが異なる。本症例でも,右側の逆生歯は,初診時のCTでは左側より低位にあり鼻口蓋管に接していたが,2年5ヶ月後のCTでは上顎骨から離れ鼻腔内に存在していた。矢状断による評価は,組織が軟弱な切歯間縫合や鼻口蓋管付近から,過剰歯が鼻腔内に萌出してくる可能性など,鼻腔内逆生歯の機序解明に有用と考えられた。両側性の鼻腔内逆生歯では,病変が左右対称の場合には診断が困難な可能性があり,将来的な齲歯などの合併症の予防のためにも,鼻腔内腫瘤の鑑別疾患として本疾患を念頭に置き,診療に臨むことが望ましいと考えられた。
ISSN:0910-9153
1883-7077
DOI:10.7248/jjrhi.63.112