肉眼的に明らかな所見を認めなかった肛門管癌pagetoid spreadの1例

症例は66歳の女性,主訴は血便.精査で肛門管内に3cm大の1型腫瘍を認め,肛門管腺癌cT2N0M0 Stage Iの診断となった.周囲粘膜と肛門皮膚に有意な所見は認めず,腹腔鏡下腹会陰式直腸切断術を施行した.標本上も腫瘍以外に肉眼的所見を認めなかったが,病理組織学検査では癌周囲の表皮内にPaget細胞の浸潤を認めた.免疫染色の結果はCK20(+)CK7(-)GCDF15(-)であり癌部と一致し,pagetoid spread(PS)を伴う肛門管腺癌(全体の最大径102mm,pT2pN0M0,ly1,v2,PM0,DM0(3mm),RM0)と診断された.PSは悪性腫瘍が原発巣から表皮内へ経上皮性...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 79; no. 6; pp. 1288 - 1293
Main Authors 滝口, 伸浩, 早田, 浩明, 鍋谷, 圭宏, 佐藤, 菜実, 外岡, 亨, 星野, 敢
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2018
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.79.1288

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Summary:症例は66歳の女性,主訴は血便.精査で肛門管内に3cm大の1型腫瘍を認め,肛門管腺癌cT2N0M0 Stage Iの診断となった.周囲粘膜と肛門皮膚に有意な所見は認めず,腹腔鏡下腹会陰式直腸切断術を施行した.標本上も腫瘍以外に肉眼的所見を認めなかったが,病理組織学検査では癌周囲の表皮内にPaget細胞の浸潤を認めた.免疫染色の結果はCK20(+)CK7(-)GCDF15(-)であり癌部と一致し,pagetoid spread(PS)を伴う肛門管腺癌(全体の最大径102mm,pT2pN0M0,ly1,v2,PM0,DM0(3mm),RM0)と診断された.PSは悪性腫瘍が原発巣から表皮内へ経上皮性に浸潤する病態である.肛門管癌にPSを伴う場合は切除範囲が重要となるが,自験例では広範囲にPSが存在したものの肉眼的所見を認めず術前評価が困難であった.肛門管癌の診療にあたる際はPSの可能性を念頭に置く必要がある.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.79.1288