内視鏡下で開窓術を施行した鼻口蓋管嚢胞例
鼻口蓋管嚢胞(切歯管嚢胞)は胎生期の鼻口蓋管の上皮遺残に由来する顎骨の非歯原性嚢胞であり,上顎の中切歯後部に発生する比較的まれな疾患である。口腔外科領域での経歯齦部または経口蓋アプローチによる嚢胞摘出術の症例報告が多いが,近年では内視鏡下鼻副鼻腔手術の普及に伴って,より低侵襲な内視鏡下の嚢胞開窓術が選択肢としてあげられるようになった。症例は38歳男性,鼻腔内視鏡で両側鼻腔底に隆起性病変を認め,CT,MRIで鼻口蓋管嚢胞と診断された。我々は鼻口蓋管嚢胞に対して内視鏡下鼻内手術を施行し,右鼻腔底より嚢胞の開放を試みた。術後は両側鼻腔底の腫脹は消失し,術後約1年経過後も閉鎖を認めていない。内視鏡下鼻...
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          | Published in | 日本鼻科学会会誌 Vol. 63; no. 1; pp. 127 - 133 | 
|---|---|
| Main Authors | , | 
| Format | Journal Article | 
| Language | Japanese | 
| Published | 
            日本鼻科学会
    
        2024
     | 
| Subjects | |
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| ISSN | 0910-9153 1883-7077  | 
| DOI | 10.7248/jjrhi.63.127 | 
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| Summary: | 鼻口蓋管嚢胞(切歯管嚢胞)は胎生期の鼻口蓋管の上皮遺残に由来する顎骨の非歯原性嚢胞であり,上顎の中切歯後部に発生する比較的まれな疾患である。口腔外科領域での経歯齦部または経口蓋アプローチによる嚢胞摘出術の症例報告が多いが,近年では内視鏡下鼻副鼻腔手術の普及に伴って,より低侵襲な内視鏡下の嚢胞開窓術が選択肢としてあげられるようになった。症例は38歳男性,鼻腔内視鏡で両側鼻腔底に隆起性病変を認め,CT,MRIで鼻口蓋管嚢胞と診断された。我々は鼻口蓋管嚢胞に対して内視鏡下鼻内手術を施行し,右鼻腔底より嚢胞の開放を試みた。術後は両側鼻腔底の腫脹は消失し,術後約1年経過後も閉鎖を認めていない。内視鏡下鼻内手術を経験している耳鼻咽喉科医であれば十分応用可能な手技であり,侵襲の少ない内視鏡下での嚢胞開窓術は従来法と比較しても大変有用であると考えられる。しかし鼻口蓋管嚢胞より発生した扁平上皮癌などの悪性腫瘍も報告されているため適応を十分検討する必要があり,また手術の際には鼻口蓋管神経の損傷による知覚異常等の合併症にも注意が必要である。これらの知見を踏まえて,今回我々が手術に対して工夫したことについて述べる。 | 
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| ISSN: | 0910-9153 1883-7077  | 
| DOI: | 10.7248/jjrhi.63.127 |