計画的門脈部分動脈化を施行した肝左葉切除後固有肝動脈瘤破裂の1例

症例は64歳の男性で,肝門部領域胆管癌に対して肝左葉切除,尾状葉全切除および肝外胆管切除術を施行した.術後合併症なく経過し第13病日に退院したが,第27病日に腹痛を認め当院へ救急搬送された.同日中に下血を生じショック状態に陥ったため,緊急血管造影検査を施行し固有肝動脈の仮性動脈瘤破裂の診断となった.肝動脈以外に残肝への動脈性供血路は認めなかったが,止血のために固有肝動脈をコイルで塞栓した.塞栓術直後に残肝への動脈性血流の確保を目的に回結腸動静脈を吻合し門脈部分動脈化を施行した.術後は合併症なく経過し,第64病日に残肝への動脈性供血路が形成されていることを確認した後,回結腸動脈をコイル塞栓した....

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 79; no. 5; pp. 1070 - 1076
Main Authors 櫻庭, 伸悟, 袴田, 健一, 石戸, 圭之輔, 内田, 知顕, 工藤, 大輔, 木村, 憲央
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2018
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.79.1070

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Summary:症例は64歳の男性で,肝門部領域胆管癌に対して肝左葉切除,尾状葉全切除および肝外胆管切除術を施行した.術後合併症なく経過し第13病日に退院したが,第27病日に腹痛を認め当院へ救急搬送された.同日中に下血を生じショック状態に陥ったため,緊急血管造影検査を施行し固有肝動脈の仮性動脈瘤破裂の診断となった.肝動脈以外に残肝への動脈性供血路は認めなかったが,止血のために固有肝動脈をコイルで塞栓した.塞栓術直後に残肝への動脈性血流の確保を目的に回結腸動静脈を吻合し門脈部分動脈化を施行した.術後は合併症なく経過し,第64病日に残肝への動脈性供血路が形成されていることを確認した後,回結腸動脈をコイル塞栓した.門脈圧亢進症などの合併症に注意を要するが,肝切除術後の肝動脈に発症する仮性動脈瘤破裂に対して塞栓術と門脈部分動脈化を併用することは,術後の虚血性肝不全を回避する有効な治療戦略の一つであると考えられた.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.79.1070