鈍的腎動脈損傷に対する腎動脈ステントの有用性と安全性-不完全閉塞5例への使用経験

【目的】腎動脈ステント留置術の目的は患側腎機能の温存と腎血管性高血圧症の予防とされている。当救命救急センターでの経験から鈍的腎動脈損傷に対する腎動脈ステント留置の有用性と安全性を検討する。【対象と方法】当救命救急センターにて10年間に腎動脈ステント留置術を行なった不完全閉塞型の鈍的腎動脈損傷5例に関し,診療録を用いて後ろ向きに調査した。【結果】男女比は男性4名:女性1名。受傷機転は高所墜落が4名,交通事故1名。全例が多発外傷であり,injury severity score(ISS)中央値は32(22-57)[中央値(最小値-最大値)],予測生存率中央値は0.547(0.533-0.980)で...

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Published in日本救急医学会雑誌 Vol. 25; no. 1; pp. 9 - 15
Main Authors 小井土, 雄一, 井上, 潤一, 岡田, 一郎, 霧生, 信明, 加藤, 宏, 服部, 貴行, 森本, 公平
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本救急医学会 2014
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ISSN0915-924X
1883-3772
DOI10.3893/jjaam.25.9

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Summary:【目的】腎動脈ステント留置術の目的は患側腎機能の温存と腎血管性高血圧症の予防とされている。当救命救急センターでの経験から鈍的腎動脈損傷に対する腎動脈ステント留置の有用性と安全性を検討する。【対象と方法】当救命救急センターにて10年間に腎動脈ステント留置術を行なった不完全閉塞型の鈍的腎動脈損傷5例に関し,診療録を用いて後ろ向きに調査した。【結果】男女比は男性4名:女性1名。受傷機転は高所墜落が4名,交通事故1名。全例が多発外傷であり,injury severity score(ISS)中央値は32(22-57)[中央値(最小値-最大値)],予測生存率中央値は0.547(0.533-0.980)であった。観察期間中央値は12(3-110)か月であった。急性腎不全は2例に発症したが,いずれも透析を離脱できた。全例生存退院した。ステント留置術に伴う合併症を認めなかった。術後造影CTでは,ステント閉塞や腎実質の萎縮は認めず,3例に実施した腎シンチグラフィでは,分腎機能の顕著な低下は認めなかった。腎血管性高血圧症は1例に発症したが,1か月間の降圧剤投与ののち正常血圧となり,以後降圧剤の投与を要さなかった。【結語】全例生存し,ステント留置術に伴う合併症は認めなかった。腎機能を温存でき,慢性的な腎血管性高血圧症は認めなかった。不完全閉塞型鈍的腎動脈損傷に対するステント留置術は有用な治療法と考える。
ISSN:0915-924X
1883-3772
DOI:10.3893/jjaam.25.9